田中が取りまとめた「都市政策大綱」の恐るべき内容

僕は田中角栄以降、日本の総理大臣とはすべて一対一で会って話をしています。田中の特徴は、なんといっても構想力でしょう。

ジャーナリスト 田原総一朗氏
ジャーナリスト 田原総一朗氏

すごい政治家だと初めて認識したのは、1968年に田中が自民党都市政策調査会長として「都市政策大綱」を発表したときでした。前年の東京都知事選挙で、社会党と共産党が推薦した美濃部亮吉が当選しました。それ以前に京都は革新知事だったし、その後は名古屋や大阪でも革新が勝った。その状況に危機感を覚えて、田中は「中央公論」に「自民党の反省」という論文を書きます。

当時、太平洋側の都市は工業化が進み、過密と公害が問題になっていました。そうした不満を吸い上げて当選したのが革新系の首長たちです。それに対して田中は、革新は反対だけで対案がなく、政権を任せられない。だから自民党が力をつけなくてはいけないと反省したのです。

では、どうすればいいのか。その答えを示したのが都市政策大綱でした。ここで示されたのは、日本全体を1つの大きな都市にするという構想でした。新幹線や高速道路、航空路線網を張り巡らせ、日本全国を日帰り圏にする。そうすれば日本海側や内陸部にも工場ができ、過密や公害で悩む太平洋側の問題も解決できるというわけです。こんな構想を示した政治家は、それまでいませんでした。