もしあなたが西郷なら、江戸城への総攻撃を中止できますか?

命もいらず 名もいらず』執筆にあたり、『大西郷全集』などの資料を読み込みました。その過程で再認識したのは、西郷隆盛は私が思っていた以上に偉大な人物だということです。

ものに動じない胆力、私利私欲を持たない無私の心、人をひきつける人間力、徹底した情報収集と分析力、情報に裏打ちされた先見性、目先にとらわれない大局観、果断な決断力、間違ったと感じたら修正できる素直な心、敵を赦す慈愛の心、挙げればきりがありませんがそのどれもが一級品なのです。

西郷隆盛、最大の偉業「江戸城無血開城」●慶応4(1868)年3月13~14日、江戸・田町で行われた西郷と勝との会談で、15日に迫っていた江戸城総攻撃の中止が決まる。「国の存続」をブレずに考え続けた西郷ならではの偉業だった。
西郷隆盛、最大の偉業「江戸城無血開城」●慶応4(1868)年3月13~14日、江戸・田町で行われた西郷と勝との会談で、15日に迫っていた江戸城総攻撃の中止が決まる。「国の存続」をブレずに考え続けた西郷ならではの偉業だった。(AFLO=写真)

彼のすごさを一番実感できるのが江戸城無血開城です。ご自分が西郷だったら、あの状況で江戸城総攻撃中止の命令を出せるかを是非考えていただきたいのです。

そもそも天皇は徳川慶喜討伐の詔勅を下しています。総攻撃中止は命令違反です。過激な公家も多かったし、自分の配下だって旧幕府勢力を一掃しようと考えている者がほとんど。そもそも西郷自身そう考えていたわけです。だが彼は、命がけで総攻撃中止と慶喜の助命を訴えてきた山岡鉄舟の言葉に耳を傾け、幕府を代表する勝海舟との会談を受け入れた。そして勝も大したものです。彼は西郷に語るわけです。維新のそもそもの目的は何だったかを。