新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府は追加景気対策の検討に入った。2020年度予算の成立前だけに異例の対応だ。リーマンショック以上ともいわれる現状にどんな手を打つのか。目玉として俎上にあがりはじめたのは「消費税率の引き下げ」だ――。
参院予算委員会で麻生太郎副総理兼財務相(右)と話す安倍晋三首相
写真=時事通信フォト
参院予算委員会で麻生太郎副総理兼財務相(右)と話す安倍晋三首相=2020年3月16日、国会内

経済立て直しは「ポイント還元」では足りない

「現在はあくまで感染拡大の防止が最優先ですが、その後は日本経済を再び確かな成長軌道へ戻し、皆さんの活気あふれる笑顔を取り戻すため、一気呵成かせいにこれまでにない発想で思い切った措置を講じてまいります。その具体的な方策を政府・与党の総力を挙げて練り上げて参ります」

3月14日夕、安倍晋三首相は首相官邸で開いた記者会見で声を張り上げた。今の経済状況は極めて深刻だ。会見から3日後の17日には日経平均株価(225種)の終値は1万7000円レベルだった。既に「危険水域」を突破しており、大胆な経済対策は待ったなしの状態になっている。

本来であれば新年度予算案の国会審議が続いている時に追加経済対策や補正予算の議論をするのはタブーだ。野党側から「ならば本予算案を組み替えればいい」と横やりを入れられて予算案審議がストップする恐れがあるからだ。しかし、今は、そんなことは言っていられない。野党も審議を拒否すれば、自分たちに批判が集まることを知っている。

現段階で経済対策の柱として語られているのは、キャッシュレス決済時のポイント還元の延長・拡充や、子育て世帯などへの現金給付などがある。だが、これらはいずれも「想定の範囲内」の対策だ。特に「ポイント還元」については、昨年10月に消費税率が10%に上がった際の景気冷え込み策と目されていたが、その期待を見事に裏切ったことは実証済みである。今は「異次元」の対応が求められる。