決断すれば一気に「史上初の消費税減税」に走りだす
安倍氏は13日、甘利明党税調会長を首相官邸に呼び、会談している。甘利氏は安倍氏とはウマが合う。しかも政治的嗅覚が鋭い。決断すれば一気に「史上初の消費税減税」に走りだす陣立てができあがるだろう。
消費税率引き下げについて、自民党内では今も反対論が多数派であることは事実だ。二階俊博幹事長も「(いったん税率を下げて)いつ元に戻すのか。誰が責任を取るのか」と語っている。しかし「新型コロナ」の感染と、それに伴う経済危機の拡大が続けば「危機を乗り切るには消費税減税しかない」という声が、オセロゲームのように急増するだろう。
自民党若手が提案しているように税率「ゼロ」にするのはさすがに現実的ではないが「5%」あたりが落としどころという声があがる。東京五輪・パラリンピックが延期になるのを見越して「五輪後まで2年間」減税するという案が浮かぶ。
「減税」先食いで野党共闘分断という狙いも
実は政局面でも、消費税減税を行う「メリット」がある。ズバリ、野党勢力の分断だ。
先に触れたように、れいわ新選組の山本氏は「消費税ゼロ」を掲げている。野党内では次の衆院選に向けて「消費税」を旗頭に結集を目指そうという動きがある。
立憲民主党と国民民主党の合流が不調に終わるなど野党結集は遅々として進まない。しかしコロナショックは、野党を消費税減税で接近させる触媒になる可能性がある。野党連合が完成すれば、安倍政権にとっては脅威だ。
「その前に機先を制するという政治判断は、当然ある」
ある自民党中堅議員が語る。安倍氏はこれまでも、消費税増税を凍結する決断を争点に掲げて衆院を解散するなど、巧妙に野党との争点ぼかしをしてきた。今回も同じ手法が頭の中にあることだろう。
安倍氏は17日昼、首相官邸に岸田文雄党政調会長を呼び経済政策をまとめるよう指示した。会談後、岸田氏は「大筋の方向性は一致しました」と記者団に語った。「大筋の方向性」の中に消費税の減税も含まれているのか。今月中には結果が分かるだろう。