妻の「転居先」は、不倫男の自宅の近所だった

「また、今回の事案はお子さんがまだ5歳と3歳と幼い。家庭裁判所は、子どもが幼いと、母親の必要性を優先する傾向があります。お子さんの意思も大切ですが、幼いうちは明確に意思表示もできませんので、結局母親が優先されることが多いといえるでしょう。私自身、男性側の代理人として裁判所に立つ機会もありますが、正直なところ、母性優先という結論ありきの判決なのではないかと、悔しい思いをしたこともあります」(松下真由美弁護士)

仁志さんは探偵の調査により妻の転居先を知り、さらに打ちのめされることになる。妻の転居先は不倫男の自宅の近所だったのだ。そこで不倫相手に、示談金の交渉と子供への接触禁止を要求したが、男は既に仁志さんの妻の家に出入りしており、それには応じられないとの返答だった。

「私は、自分の愛すべき子供たちに会うために、様々な制限がありますし、会いたいときに会えるわけではありません。それなのに、不倫男は子供たちが住むアパートに好きに出入りしている。こんなことが許されるなんて……」

「私は大人ですから感情を抑えられます。でも子供たちは保育園と自宅、近くの公園という狭い世界を突然奪われ、知らない環境で生活せざるを得なくなっています。さらに見ず知らずの男と一緒に生活する、となれば恐怖でしかない。昨今の『連れ子虐待』のニュースを見るたびに、気が気ではありません」

「妻の機嫌を損なえば子供に会えなくなると思うと…」

今後、妻と離婚が成立し、仁志さんが親権を失えば、不倫男が子供たちと養子縁組をすることを仁志さんは拒否できない。仁志さんに残された権利は、子供との面会交流と妻の不貞行為に対する慰謝料の請求だ。しかし、その権利も声高に主張ができない事情があるという。

「妻は子供を連れ去ったあと、私の渡す生活費で不倫相手と生活し、たまに面会交流で子供たちと会えるという飴をちらつかせて、離婚を迫ってくる。面会交流に関して調停の場でルールが決まっていない現状では子供に会えるかどうかは妻の気分次第です」

「妻の機嫌を損なえば子供に会えなくなると思うと、こちらから慰謝料など請求できるはずもありませんし、面会交流に関しても妻の事情を考慮して主張せざるをえません。まるで子供を人質に取られたみたいです」