アップテンポとスローテンポ、どちらが売り上げに貢献するか?
あなたがよく行くスーパーマーケットやデパート、ショッピングモール等で、どんなBGMが流れていたか、思い出せますか? そもそもBGMが流れていたことすら気づかないでいた人もいるのではないでしょうか?
わたしたちは、商業空間でなにげなくBGMを聞くことに慣れています。そのため、BGMに意識的に注意を払うことはほとんどありません。このとき流れている音楽は、まさに、その名の通り「バック・グラウンド・ミュージック(=背景音楽)」なのです。
ところが、わたしたちがサウンドに対して意識的に注意を払っていないだけであって、お店のほうが、わたしたちの購買意欲を高めるための手段としてサウンドを活用していないわけではありません。
スーパーマーケットに流すBGM、アップテンポのものとスローテンポのもの、どちらが売り上げに貢献すると思いますか?
アップテンポのほうが、気分が高揚して購買意欲が高まるような気がするかもしれませんが、ニューヨークのスーパーマーケットで行われた「音楽のテンポが買い物客の購買行動に与える影響」についての調査(※)では、反対の結果が出ました。
※Milliman,R.E.(1982).Using Background Music to Affect Behavior of Supermarket Shoppers.Journal of Marketing.46(3).pp.86‐91.
それによると、アップテンポのBGMが店内で再生されていたとき、買い物客が店内をより速く歩くようになったといいます。目的の商品へと足早に向かうことで、他の商品を見て回る機会が大幅に損なわれていました。
スローテンポで売り上げが32%も増えた理由
一方、スローテンポの音楽は反対の効果をもたらしました。買い物客は目的の商品がある棚まで一直線に向かうのではなく、店内の雰囲気を楽しみながら他の商品が陳列されている棚も見て回り、より多くの商品を購入していました。
そのスーパーマーケットでは、スローテンポのBGMを再生した日は、アップテンポのBGMを再生した日と比較して、「売り上げ32%増」を記録しました。
一時期、ファレル・ウィリアムスの「Happy」や、テイラー・スウィフトの「Shake It Off」など、幅広い年齢層に親しまれるポピュラーサウンドが、どこでもヘビーローテーションでかけられていました。
彼らの曲は親しみやすいサウンドなのですが、アップテンポのビートであり、歩くスピードを速めてしまいます。アップテンポのサウンドにはウキウキと気持ちを高揚させる一方で、歩くスピードを速め、視野を狭める作用があります。アップテンポのサウンドを使うときには、十分に注意が必要です。