1~2時間の時差出勤では限界がある

東京圏の通勤電車は平均で150%以上の混雑を記録しており、仮に乗車率を100%まで低下させるとしても、乗客を3分の1削減する必要がある。既にIT関連企業を中心に、テレワークの導入、拡大を進める企業が相次いでおり、通勤電車はいつもよりすいているという声もあるが、目に見えて混雑が減少するほどの状況とは言い難い。

満員電車の混雑を緩和するためにはピーク時間帯の輸送人員を減らす必要がある。ピーク輸送人員を削減するためには、外出の自粛やテレワークによる利用者そのものの削減と、前後の時間帯にずらして乗るための時差通勤が必要になる。

しかし、通常のダイヤは朝ラッシュ時間帯のピーク1時間の輸送量に対応する輸送力を確保するために作成されており、むやみに出勤時間を前後させると、運行本数の少ない時間帯に多くの利用者が集中する結果となり、朝ラッシュピーク時間帯前後に激しい混雑が発生することも考えられる。実際、利用者の間では時差通勤をすると、かえって電車が混んでいるという声も出始めている。

本来であれば鉄道事業者側も、利用の分散に応じてピーク時間帯前後の運行本数を増発するなど、時差出勤が混雑緩和につながるような輸送計画を立てる必要があるが、それを行うには要員確保も含めて時間的余裕がない。1~2時間程度の時差通勤には限界があることが見え始めている。

もはやこの状況では、通勤利用者の個々の自主的な時差通勤に期待するのではなく、企業側が広範囲の出勤停止、テレワークの導入を決断し、利用者の総数そのものを削減する以外に効果的な混雑対策は存在しないと言ってもよい。どうしても出勤が必要な場合は3~4時間の思い切った時差出勤を検討する必要があるだろう。

すでに交通機関の職員まで感染している

しかも、現実には輸送力の確保すらも困難になっていく状況が想定されている。JR東日本は24日、横浜線相模原駅で勤務する50代のグループ会社社員がコロナウイルスに感染したと発表した。接客業務にはついておらず、乗客への感染はないとしているが、26日にはその同僚である60代男性の感染が確認された。同社は、社員が最近勤務した3駅の消毒を実施するとともに、男性と接触のあった社員の検査を進めている。

実際、名古屋高速道路公社で22日、同社の男性事務員が新型コロナウイルスに感染していたことが判明。男性と濃厚接触した料金所の職員52人が自宅待機となり、職員不足により6カ所の料金所の有人レーンを閉鎖する事態に陥っている。