おまえは確変中。何をやっても出る
北島康介、中村礼子、寺川綾、萩野公介といった数々のメダリストのコーチを務める平井伯昌さん。水泳に対して高いモチベーションを持っている選手でも、結果が出ずに挫折感を味わったり、モチベーションが下がってしまうことは多々あるという。
「多くの選手を見て感じるのは、ストレスだったりプレッシャーだったり、モチベーションが上がらない要因は一人ひとり違うということ。ですから、個々人の要因を把握することが大事です。そのためには親身になって話を聞いてあげること。そして、よくても悪くても関係性を変えないことだと思います」
例えばこんなエピソードがある。
「アテネオリンピックの1週間前の練習で、北島康介と中村礼子がそろって素晴らしい泳ぎをしていたんです。その練習後、北島は『今日こんなに調子がよければ、オリンピックでどんなタイムが出るんだろう』と興奮して言うんです。かたや中村は、『今日は調子がよかったけど、明日から下がったらどうしよう』と心配してしまう。同じことがあっても、反応が全く違うんです。そうなると自ずと声のかけ方だって変わりますよね。中村に対しては褒めて安心させ、モチベーションを上げる。北島には『おまえは確変中だから何をやっても出るぞ』なんて煽ってね(笑)」