組織力向上のカギ「フォロワーシップ」

ここでカギとなるのが、「フォロワーシップ」です。フォロワーシップとは、リーダーのビジョンを達成するために、部下が自律的に判断し行動すること。フォローすることの崇高さを部下と共有し、気づかせるのも上司に必要となるでしょう。

特に「失われた一五年」で、日本企業は昇給カットや人員削減など、リストラ策を講じてきました。その中で従業員は「自立の洗礼」を受け、企業に対する信頼感を失った。その結果、自分自身でキャリアを形成していかなければならないと考えるようになりました。

自立した少数精鋭の部下を組織に留めておくためにも、現場リーダーには彼(女)らのキャリアをサポートする役割が求められます。部下にとって必要となる知識や経験を主体的に身につけさせる。そのためには、どのような仕事を積み重ねていくべきかというロールモデルを示す必要があります。リーダーシップ論研究の第一人者・金井壽宏氏の著書『働くひとのためのキャリア・デザイン』は、部下のキャリアをともに考えていくうえで、参考となります。

部下のフォロワーシップを強化するには、自分の率いるチームのビジョンや戦略を示すことも求められます。『わかりやすいマーケティング戦略 新版』では、戦略を立案するための基本的な知識を身につけることができます。ヤマト運輸の元会長小倉昌男氏が自らの経営哲学を描いた『小倉昌男 経営学』や、過去の戦争を題材にした『戦略の本質』からは、戦略立案に必要な論理思考を学ぶことができるでしょう。『日本語の作文技術(新装版)』や『知的複眼思考法』といった本から、コミュニケーションの方法論を体得し、部下に対して戦略やビジョンを正確に伝えていくことも重要です。

優れた現場リーダーに共通する条件は、部下とのコミュニケーションを習慣化していることです。常に部下を気にかけ、どう活かせば組織の力が最大化するかを熟慮する――。ダイキン工業の井上礼之会長は、このことを実践してきました。彼の著書『「基軸は人」を貫いて』は、部下とどう向き合うかを学ぶ最もわかりやすい教科書となるでしょう。