入社5年目、理想に燃えた日々
ここに取り上げた本はどれもビジネスに即役立てられる実践主義の本だ。翻訳されているものもあるが、英語で出ているものは英語で読んだほうが書かれているロジックがわかりやすいことから原書で推薦した。
オスカー・シスゴール の『Eyes on Tomorrow』はP&Gの社史のような本。これを読んだ1981年当時、会社は日本からの撤退も考えていた大変な時期だった。しかし、入社5年目で、ブランドマネジャーをやっていた私は、正しい人を雇って育て、組織を活性化させるという世界レベルのマネジメントに触れ、自分の組織がそこからは程遠いことを知ると同時に、理想に燃えた。
そして、この本にあるすべてのことを一つひとつ私の組織にもあるようにしていった。例えば、年功序列のシステムに疑問を持ち、有志で勉強会を開いてパフォーマンスに基づいた給与システムの提案書を会社に提出したこともある。本来の自分の業務ではないが、理想像を持っていると、ほかの部分も気になり始め、行動したくなるものだ。『Competing for the Future』は、未来に向かって競争に勝つための戦略をいかにつくるかについて述べた本。勝つには人と違うことをしなくてはいけない。だが誰もやったことのないことは難しい。P&Gでは、正しくて難しいことをやれと言われていたが、この本を読んで実践を積むと、正しい戦略は難しいことが多いということに気づかされるはずだ。
リーダーシップの向上を図るため、当時の上司から勧められたのが『The West Point Way of Leadership』だ。米国の陸軍士官学校で教えられる超エリートのためのリーダーシップスタイルが、4つのレベルに分けて物語風に紹介される。メンバーを活性化させる仕組みや戦略を考え、決断を下す方法は参考になる。
組織を巻き込んだ大改革を進めるためのステップが『Leading Change』では具体的に指南されている。人は変化を嫌がるもの。社員を新しいプロジェクトに意欲的に取り組ませ、いかに鈍化している組織全体をリードしていくか。目標にたどり着くまでのカーナビのような本で、すぐに行動を起こせるだろう。
実際の読書法だが、分厚い洋書を前から順番に読む必要はない。最初の部分のとっつきが悪ければ50ページほど飛ばして読んでみてもいいし、斜め読みをして重要そうだと思える個所をじっくりと読むのもいい。
また「トップポイント」などの新刊要約サービスもお勧めする。毎月10冊ほど、話題の新刊を4ページくらいに要約して送ってくれるサービスで、同様のサービスは洋書にもある。また最低限、新聞の書評欄に目を通すくらいはしておきたい。