「人材観察力」を磨き優秀な部下を育てよ
今年、人材マネジメントにおいて最大のテーマとなるのは「少数精鋭」でしょう。前回の不況期には、人件費を削減するためのリストラが行われ、優秀な人材も辞めていったのに対し、この失速期には優秀な人材を確保しつつ、活躍できない人材にどう対処するかという「人材の選択と集中」が一層迫られているのです。同時に、女性、外国人、中途入社社員といった多様な人材を活用し、その中でも優秀な人材をさらに伸ばす「選抜型の育成」が求められるようになります。
現場リーダーであるミドルマネジメント層にも、同じことがいえます。つまり、多様性のあるチームを率い、その中から能力の高い部下を見極め、育成しなければなりません。
そのために、現場リーダーには何が求められるのか。キーワードとなるのは、「人材観察力」と「フォロワーシップ」です。
かつて、日本企業の現場リーダーの多くは、部下に関する情報を濃密に保持していました。しかし、成果主義の導入、人事制度の変革などによって、情報が仕事上の成果や能力に集中するようになりました。
部下をマネジメントするためには、能力や成果だけではなく、人としての側面を含んだ情報まで把握する必要があります。個人の価値観や好き嫌い、強み、弱み、家族状況など仕事以外の生活についても理解することで、部下一人ひとりに見合った育成を行うことができる。そうすることで、強い組織が生まれるのです。
社会学者・山口一男氏の著書『ダイバーシティ』は、多様な人材を活用するための手引きとなるでしょう。米スタンフォード大学経営大学院教授であるチャールズ・オライリー氏とジェフリー・フェファー氏の共著『隠れた人材価値』や、日本を代表する経営学者・伊丹敬之氏の著書『人本主義企業』にも、「人材観察力」を磨くヒントが描かれています。
欧米企業と比較した場合、日本企業の持つ合理性は、従業員に深くコミットすることで、彼(女)らの力を期待以上に引き出すところにあります。しかし、このことを理解している現場リーダーは存外少ない。法政大学名誉教授小池和男氏の『仕事の経済学』は、日本の雇用制度の先進性を知るための良書です。
一方、少数精鋭の下、部下の多くがリーダーに選抜されず、彼(女)らの負担感が大きくなることが予想されます。現場リーダーには、負担感をどうモチベーションに変えていくかが求められる。