ミドルに求められる「鳥の目」と「虫の目」

<strong>海稲良光/上畑廣高</strong>●海稲良光氏(写真左)は、トヨタ自動車出身。上畑廣高氏(写真右)は、リクルート出身。両者とも2002年より現職。
海稲良光/上畑廣高●海稲良光氏(写真左)は、トヨタ自動車出身。上畑廣高氏(写真右)は、リクルート出身。両者とも2002年より現職。

ミドルマネジメント層に求められるのは、高い場所から広範囲を俯瞰する「鳥の目」と、細部を見分ける「虫の目」です。言い換えれば、経営者の視点と現場担当者の目線を併せ持つ「複眼リーダー」が必要とされるのです。

では、この2つの目を持って、どのような能力を磨けば、優れたリーダーになれるのでしょうか。

トヨタ自動車とリクルートの共同出資会社である当社では、トヨタのOBであるトレーナーが各企業を訪問し、「カイゼン」や「ジャスト・イン・タイム」などトヨタの生産方式をベースにしたコンサルティングを行っています。トヨタの管理職において重視される5つのポイントから、組織のリーダーに必要とされる能力を見ていきましょう。

まず、1つ目は「課題創造力」。現在、多くの企業が業績悪化に苦しんでいます。トヨタも例外ではありません。しかし、混迷の時代こそ、組織が抱える課題や問題点を見つけるいい時期なのです。

組織のリーダーには、自ら課題を発見し、それを解決する能力が求められます。ここで言う課題とは、「あるべき姿・ありたい姿」――「現状」。「あるべき姿・ありたい姿」を見つけるには、「鳥の目」が必要になります。また、リーダーは、「虫の目」を持って「現状」を把握しなければなりません。『失敗学のすすめ』や『知識創造の方法論』といった本は、大局観を養う参考書となるでしょう。『コンサルタントの「現場力」』では、「現状」を把握し、解決策を探すための方法論を掴むことができます。

2つ目は、「課題遂行力」。思い切った決断をするとともに、課題の真因を追究し、粘り強く改良に挑み続ける姿勢です。ここで重要となるのは、「とことん困ること」。逆に言えば、困り方が不足していると知識や経験が邪魔をして知恵が出ない。トヨタでは、1つの課題に対して5つの「なぜ」を探し出し、それについて深く考えることが求められます。『トヨタ生産方式』は、こうした課題遂行のプロセスを学ぶことができる本です。

3つ目は「組織マネジメント力」。強い組織の条件は、ムダがなく、トラブルが起こったときにも迅速に対応できること。このことを実現するためには、仕事の枠組み・仕組みを“見える化”することが必要です。『見える化』にはトヨタのほか、家電・食品メーカーなどの様々な企業の事例が描かれています。