4つ目は、「人材活用力」です。組織が「見える化」しても、部下のやる気を引き出せなければ、強い組織は生まれません。『新版 企業の人間的側面』は、部下をマネジメントする際のヒントとなるでしょう。
この本には、有名な「XY理論」が登場します。簡単に言えば、X理論は「人間はもともと怠け者で、強制や命令がないと働かない」という考え方。Y理論は、「仕事をするのは人間の本性で、自ら設定した目標に対しては積極的に働く」という考え方。当社の出資会社であるリクルートは、Y理論の実験会社です。この考え方のもと、人を成長させることを重視し、発展してきました。
リーダーがX理論を採っていては、部下のモチベーションは下がり、組織はいずれ疲弊してしまいます。厳しい環境に立ち向かっていく今こそ、部下に課題を与えるだけでなく、自ら課題を創造させなければならない。部下のモチベーションを担保し、育成していかなければならないのです。
トヨタにおいて理想とされるリーダー像は、「できる人」ではなく、「伸ばす人」。「教える」より「気付かせる」ことが重要です。『「できる人」で終わる人 「伸ばす人」に変わる人』では、豊富な具体例からリーダー論を学ぶことができます。当社が執筆・編集した『人を育てるトヨタの口ぐせ』も参考になるでしょう。この本には、トヨタで代々受け継がれてきた部下を伸ばすための言葉が、数多く詰まっています。
5つ目は、「人望」。「あの人には安心感、安定感がある」と感じさせることも、リーダーに必要な条件です。そのためには、専門的な知識だけでなく仕事に直接関係しない幅広い知識を身につける必要があるでしょう。『ドル崩壊!』『デフレは終わらない』などを読み、昨今の経済事情に精通することも一つの手段です。
最後に、こうしたビジネス書などを効率的に読むための技術を紹介しましょう。まず、「はじめに」→「あとがき」→「目次」の順に読み進め、著者の意図を推察する。次に、本文の気になった部分にマーカーを引いていく。読み終えたらマーカー部分を中心に再読し、論旨やキーワードを手帳などに箇条書きしていく。こうしたサイクルを習慣づけることで、自分の血肉となるのです。