ところで、発明からまだ20年に満たないリチウムイオン電池はこれからまだまだ技術革新の余地があると期待する声が強いが、果たして日本のオリジナル技術が世界制覇に向けてさらなる進化を続けることは可能なのだろうか。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が音頭を取り、京都大学で進められている「革新型蓄電池先端科学基礎研究事業」がその解の一つになる。
これは、09年10月に発足した7年間のプロジェクトで、国が210億円を投じて従来のリチウムイオン電池の3倍以上の性能を目指すが、それはガソリン車並みの航続距離が得られるEV用の革新的な電池を意味する。
参加メンバーは、トヨタ自動車、日産自動車、三菱自動車、三洋電機、パナソニック、日立製作所、GSユアサなど12社と、京大など14の研究機関。このプロジェクトのリーダーを務めるのが、電気化学専攻で電池研究の第一人者、小久見善八・京大特任教授である。
「バッテリーは半導体に比べて、設備投資は少なくて済むし、材料も製造装置もどこからでも買ってこられます。技術では先行したとはいえ、日本のメリットはほとんどないといっていいのが現状です。そこに日本が競争力をつけて製品を差別化していくには、電池の中でどんな化学反応が起きているのか、基礎からの研究を通じて新たな世界を切り拓いていくしかないという考えで、このプロジェクトがオールジャパンでスタートしたのです」