韓国のサムスン、中国のハイアールなどと比べて今、日本の製造業に元気がない。今後、日本が力強さを取り戻すための答えの一つが、電池、磁石、半導体など“日本発の技術”の活かし方だ。その最前線をリポートする。
大和ハウス工業やシャープなどが出資する蓄電池製造のベンチャー企業、エリーパワー(東京・品川)。3.11の東日本大震災を契機に、移動式大型リチウムイオン蓄電池「パワーイレ」の引き合いが急増している。
パワーイレ一台で最大1000ワットの消費電力に対応することができ、パソコンなどOA機器だけでなく、冷蔵庫などの大型家電の電力として利用することも可能。蓄電能力は2キロワット時にのぼり、一般家庭の1日の平均電気使用量(10キロワット時)の2割程度をまかなうことができる。現在、エリーパワーはオフィスや工場などの法人向けに月3万6000円のリース契約による販売をしている。今秋には家庭電源用としても売り出す計画で、価格は100万円台後半を見込む。
エリーパワーを創業したのは、元銀行マンの吉田博一社長だ。97年に住友銀行(現三井住友銀行)を副頭取で退任後、三井住友銀ファイナンス&リースの社長、会長を歴任した。その後、慶應義塾大学のEVプロジェクトに参画し、同社を立ち上げたときはすでに69歳だった。「とにかく他人と違うことをやりたい」という一念で2006年9月にわずか4人の同志で創業にこぎ着けた変わり種だ。今やリチウムイオン電池の技術は、このようなベンチャー企業も生み出している。