ラグビー日本代表が2019年のW杯日本大会でベスト8に躍進した背景にはなにがあったのか。実は前回大会の南アフリカ戦で勝つまで、日本代表はたった1勝しかできていない「負け慣れたチーム」だった。元日本代表メンタルコーチの荒木香織氏が、チームを変えたトレーニング法を紹介する――。

※本稿は、荒木香織『リーダーシップを鍛える ラグビー日本代表「躍進」の原動力』(講談社)の一部を再編集したものです。

写真=時事通信フォト
ラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会で初の8強入りを果たした日本代表のパレードを前に、あいさつするリーチマイケル主将(中央、東芝)=2019年12月11日、東京都千代田区

エディー元ヘッドコーチとの出会い

2012年7月26日、東京・青山。この日、ここから私の日本代表メンタルコーチとしての仕事が始まったと思っています。エディーさん(エディー・ジョーンズ元ヘッドコーチ)との本格的なやり取りがスタートしました。

思えば、意見が合わなかったことは一度もなかったと記憶しています。私の考えや手法を否定されたこともありませんでした。ぎくしゃくしたような期間も全くありません。

エディーさんは、私のスポーツ心理学に関する知識やメンタルのトレーニングの構成について全面的に信頼をしてくれていました。たとえすぐに賛成できない場合でも、様々な質問を私に投げかけ、私から納得する答えが出るまで我慢強く話を聞いてくれました。

私はチームや選手への働きかけについて報告書を必ず提出しましたが、内容について悪い評価を受けることは一度もありませんでした。必ずしもじっくり時間をかけて読んでくれたわけではないことは知っていますが、いつも何らかの形でコメントをよこしてくれました。