負けることしか知らない「マインドセット」を変える

近くにいるときは、親指を立てて「グッドジョブ」。

離れているときは、短いメールで。

そのようにきちんと結果を評価してくれるエディーさんへの信頼は、私のなかで高まっていきました。

やり取りが進むにつれ、私の仕事が少しずつ明確になりました。

「負けることしか知らないこのチームの『マインドセット』を変える」

ボスの要求に応えるため、私は代表に招集される選手のことを四六時中、考えるようになりました。

「マインドセット」は、和訳するのが難しい英単語の一つです。

目標を達成するために課題に取り組む際の思考や姿勢、さらに周りで起きていることをどう捉えるかということです。

普段、言葉で表現されることがあまりない、個人もしくは組織が持ち合わせている思考の傾向。「信念」と言い換えることもできます。そしてそれは私たちの人生の道筋となります。

「外国人のラグビーとはレベルが違う」と決めつけていた

生き方までも決めてしまうマインドセットは、その人が生きている時代に合うよう変容していきます。

ただし、それを先取りする人もいれば、変化させられない人もいます。

例えば、私は様々な組織や団体、企業から依頼を受けて講演に行きますが、その聴講者のほとんどが男性です。なかでも、組織において長年リーダーシップを発揮されてきた年配の方が多くを占めます。

講演会後の懇親会などでは、よくこんなことを言われます。

「今さらやり方は変えられないんだよねえ。困ったもんだ」

さらに、「最近の社員はすぐに辞める。すぐあきらめてしまう」とか「我慢が足りないから対応が難しい」などとこぼされます。

このように、リーダーとして変化にうまく対応できないことが、皆さんの悩みどころのようです。それまで自分たちが行ってきた「過去」を肯定的に捉え、変化の波が生まれている「現在」を否定的に捉える傾向が見られるのです。

これと同じことが、私が仕事をした頃のラグビー日本代表チームでも起きていました。

W杯で勝った経験がないために、「世界で勝つことは難しい」「外国人のラグビーとはレベルが違う」と選手は決めつけがちでした。