消費者ニーズはモノからコトへ変わってきた。それは海外富裕層にしても同じだ。世界各国の富裕層に日本ツアーを提供するエクスぺリサスの丸山智義社長は「彼らの求める体験には共通点がある。なかでも印象的だったのは、『コンビニ飯のフルコース』をとても喜んでもらえたことだ」という――。
写真=AFP/時事通信フォト
東京のコンビニエンスストアを訪れる男性=2019年5月20日

それは突然のリクエストだった

「日本のコンビニって面白いよね。コンビニの商品でフルコースを作ることって可能?」

それは、日本に旅行に来ていた、ある海外富裕層からのリクエストでした。

私たちエクスペリサスは、国内外のいわゆる「富裕層」といわれる方々に対して、これまで数多くの体験コンテンツを秘密裏に提供してきました。その中身は京都の夜に世界遺産を舞台に能楽や狂言を提供する、東京の寺院でミシュラン料理を提供するなど、どれも富裕層しか味わえないようなスペシャルな体験がほとんどです。しかし富裕層はぜいたくを求めているわけではありません。

冒頭のリクエスト主はシリコンバレーでテック系の会社を経営する40代の米国人男性です。超富裕層の彼は、日本で体験できる数ある選択肢の中から、コンビニのフルコースが食べたいというのです。

なぜ、限られた日本滞在期間中に、わざわざどこにでもあるコンビニの商品を食べたいのか。疑問に感じて質問すると彼は目を輝かせながらこう言いました。

「僕は、これだけ勤勉で長時間働いている日本人が、ふだん何を食べて、どんな生活を送っているのか、とても興味があるんだ。そんな日本人が常日頃から利用しているコンビニを、120%、体験してみたいんだ」