無意識の行動には脳の働きが大きく関わっている。脳・神経科学分野の事業応用を手掛ける茨木拓也氏は「酒好きの私は赤提灯を見るとふらりと入りたくなってしまう。そのように脳神経系が条件付けされているからだ」という——。
※本稿は、茨木拓也『ニューロテクノロジー』(技術評論社)の第3章「マーケティングに脳科学を活かす」の一部を再編集したものです。
お酒を好きになる前後で脳に起こる変化
昨日は好きでもなかった商品を好きになったり、ちっちゃいころにはまずいとしか思えなかったビールを大人になると死ぬほど飲むようになったり、私たちの好みはある程度変わっていきます。新たに何かを好きになったりするのには、それに対応した脳の情報処理の変化があるはずです。私はお酒が好きなので、お酒を例に考えてみましょう。
お酒を好きになる前後、ニューロンレベルの変化には次の3つくらい候補があります。
1.ニューロンが増える(酒を見たら手にとる指令を出すニューロンが誕生する)
2.シナプスが増える(酒を処理するニューロンと手にとるニューロンの間でシナプスが形成される)
3.ニューロン間の伝達効率がよくなる(酒を処理するニューロンと手にとるニューロンの間の信号伝達がよくなる)
脳内ではすべて起こりえることですが、3.の「伝達効率をよくする」ことが好みの形成も含めた学習の実態としてメジャーだと考えられています。