働く単身女性の3人に1人は貧困状態にあると言われる。彼女たちはなぜ貧困に陥るのか。ノンフィクション作家の中村淳彦氏は「人間の価値が悲しいくらい暴落している。それに男たちの暴力が加わり、女性は人間性を喪失させるような苦境に陥っている」という——。

※本稿は、中村淳彦『日本の貧困女子』(SB新書)の一部を再編集したものです。

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抗がん剤を打ちながら風俗勤め

那覇の繁華街からタクシーに乗っている。メーターの加算は東京より、ゆっくりだ。那覇市外にある琉球大出身のソープ嬢・新垣玲奈さん(仮名)の実家に向かう。

沖縄は郊外に突入しても、市街地は続き、人や生活の匂いが途絶えることはない。県道から細道にはいってグーグルマップで住所をたどり、矢印の箇所に古い鉄筋つくりの一軒家があった。

LINEすると、マスク姿に帽子をかぶり、長袖のシャツで腕まで覆う新垣さんが現れた。前回の取材から3年4カ月が経っている。

3年前に取材したときはキャバクラからメンズエステ、ソープランドと業態を落としながら精神疾患に苦しんでいた。原因はすべて恋人による暴力。精神疾患の調子で出勤を調整しながらソープランドで働いた。大腸がんになったことで働けなくなった。

現在、32歳。新垣さんは顔の半分の顔色は悪く、老け、疲れ切っていた。華やかな雰囲気は失われていた。2年前に大腸がんになり、手術。長期入院。そして半年前、肺や膀胱ぼうこうなど全身転移が発見され、おそらく余命は短い。現在は自宅で抗がん剤治療を続けている。

彼女はそんな状態でも、まだ風俗勤めを続ける。療養中でありながら、沖縄市にある最下層と呼ばれるちょんの間でカラダを売っている。

ソープはもう体力的に無理で、知り合いの店で働いています。大腸がんが見つかったとき、長期入院。それがきっかけでソープを辞めてニートしていた。療養っていっても暇だし、誘われたのでいいかなって。働く時間が短いので末期がんでもなんとかなります。