サイゼリヤのパスタの味付けはシンプルだ。飲食チェーンに詳しい稲田俊輔氏は、「サイゼリヤのパスタメニューは、日常食としての控えめなおいしさを提供するという明確なスタンスがある」という――。
※本稿は、稲田俊輔『人気飲食チェーンの本当のスゴさがわかる本』(扶桑社新書)の一部を再編集したものです。
人はチェーン店について語るとき、なぜか上から目線になる
先日プロントで仕事をしていたら、隣のテーブルに2人連れのまだ20歳そこそこと思われる女子が座りました。2人ともパスタを注文していて、それを食べながらいつしかパスタ談議が始まったのですが、話題はサイゼリヤのパスタに。一人がこう言いました。
「サイゼはさあ、安くていいけど味はもうちょっと頑張ってほしいよねえ」
人はチェーン店について語るとき、なぜか急に上から目線になります。彼女たちの場合も、さっきまで「学校近くのおしゃれなカフェ」や「駅前ビルのイタリアンレストラン」のパスタについて語っていたときと比べると、サイゼリヤについて語るスタンスはあからさまに変化していました。
ちなみに彼女たちはそのとき食べていたプロントのパスタも上から目線で酷評しています。「これ何? 変な味」と、おそらくドライトマトを抜き出して紙ナプキンの上に廃棄しながら「こんなの入れずにふつうのトマトとかにしとけばいいのに」と、そのパスタメニューのコンセプトを全否定したのです。
彼女たちにとってはサイゼリヤもプロントも「軽んじて差し支えない存在」だったのでしょう。確かにサイゼリヤのパスタは、のちほど詳細に解説しますが少し特殊な設計思想のもとにレシピが作られているのでそう感じてしまう可能性はありますが、少なくともプロントのパスタが「個人経営のおしゃれなカフェ」のそれと比較して大きく異なるとは考えにくく、これがチェーン店の受難という気がします。