素材が良いからこそ「最低限の足し算」で済む

あくまで仮の話なのですが、もしもサイゼリヤで「ただ茹でただけのパスタ」が出てきたとしましょう。そこに前述のオリーブオイルをたっぷりとかけ回し、グランモラビアチーズをたっぷり振りかけて、調味料コーナーにあるブラックペッパーをガリリとひきます。するとそれは瞬く間に絶品のパスタ料理になるのです。

もちろんサイゼリヤはレストランですから、茹でただけのパスタをそのままお客に提供することはありませんが、厨房の中ではそういうミニマルな最低限の足し算だけが施された状態で商品として提供されるわけです。そこには、素材さえ良ければ無理な底上げは必要ないという強烈な自負があります。

人によってはそれだけでは物足りないでしょう。そういう人はサイゼリヤに対し「確かに安いけど安いなりの味」という評価だけを下してしまうのかもしれません。でも普段安い外食のうんざりする押しつけがましい味に辟易しているような人々にとっては、サイゼリヤは数少ない安寧の場になっているのではないかと思います。

ゆったりしたソファでフルサービスを受けられる場所

サイゼリヤというお店に対して皆さんはどういうイメージを持っていますか?

真っ先に思い浮かぶのは「低価格」ではないでしょうか。一般的にファミレスは安いというイメージもありますが、実際のところ世の中のファミレスは極端に安いわけでもないです。路地裏に佇む大衆的な定食屋とか、夜の集客につなげるためと割り切って異常にお得なランチを出す居酒屋など、探せば安くてお得な店はすぐに見つかります。

そもそも安さと満足感を追求するならファミレスよりも和風ファストフードに圧倒的に軍配が上がります。特に吉野家を筆頭に牛丼チェーンの安さはもはや異常ですし、カツ丼、天丼、さぬきうどんのチェーンなどもそれに続きます。

そんななか、ファストフードとは違って広いお店のゆったりしたソファに座り、券売機でもセルフでもないフルサービスでくつろげるにもかかわらず、サイゼリヤの低価格は圧倒的です。パスタやドリアは299円からあって、それだけで済ませるなら今となっては牛丼より安くて済みます。それに加えて199円からあるサイドディッシュのチョイスにも事欠きません。