サイゼリヤではほとんどの人がパスタを食べているが…

実際サイゼリヤで店内を見渡すと、ほとんどの人がパスタを食べてますよね。ポテトを仲良くシェアする若いカップル、なんて光景もよく目にしました。名物ともいえる299円のミラノ風ドリアも、もちろん大人気です。

サイゼリヤの平均客単価は730円程度と聞きます。おそらくほとんどの人が安くて500円から高くても1000円を超えないような使い方をしているということになるでしょうか。パスタかドリアもしくはピザにドリンクバー、時にはサイドディッシュも一品つけて、みたいなのがおそらくサイゼリヤの客の基本パターンと言えるでしょう。

ところがそんな基本パターンを全否定する、いやむしろけんかを売るような爆弾発言を聞いたことがあります。昔から食に対してこだわりと造詣の深い、私の知人O氏のサイゼリヤ評はこんなものでした。

「サイゼリヤはパスタやドリアを食べる人たちの財布でうまい塩蔵肉やら気の利いた小皿をつまみに上等なワインをたらふく飲む店だね」

これは極端な言い回しであり、O氏一流の毒のあるユーモアです。しかし、飲食店経営
者の視点でこの発言を解釈すると、これは実に的を射た洞察なのです。

パスタやドリアを頼むほどサイゼリヤは儲かる

サイゼリヤのパスタやドリアは確かに安いことは間違いありません。しかし冷静に原価を推定して計算してみると、ちゃんと儲かるようにできているのです。これはむしろ当たり前といえば当たり前。一番売れる主力商品が儲からなければ店としての経営が成り立ちません。

それに比べるとO氏が言うところの塩蔵肉、つまり生ハムやサラミ、意外とそのすごさに気づいている人の少ない粗挽きソーセージなんかは、原価だけを考えるとずいぶん無理をしているように見えます。ワインはさらにそうです。

サイゼリヤは大規模チェーンであり、生ハムやワインも含めてスケールメリットを生かした安い調達をして、パスタと変わらないような利益を出している可能性もなくはないのですが、企業内部の話で、お客さん側が享受する価値の話とはまた別です。

サイゼリヤのパスタは確かに安い。でも生ハムなどのアペタイザーやワインはもっと安い。言い換えると、サイゼリヤはパスタやドリアでしっかり利益を出しているからこそ、高品質なアペタイザーやワインを常識外れの価格で提供することができるということなんです。