月1回クラブ活動のようなもの

毎回の講義をほんとうに楽しみにしていて、講義後の質疑応答では結構な割合でいの一番に手を挙げるという秋山さん。いつも、開催日を誰よりも楽しみにしている。

「僕にとっては、月に1回のクラブ活動のようなものなんです。お酒好きな人が飲みに行くのと同じです。僕は一滴も飲めないんですけど」

クラブ活動なので、ビジネスではない。麹町アカデミアには災害用のサバイバルフーズ(非常食)のメーカーがスポンサーについており、事業として採算をとる必要はない。また、秋山さんもアカデミアの学頭は趣味でやっているようなもので、本業はプリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社の代表だ。主にリスクマネジメントのフィールドで企業のアドバイスをしている。そんな仕事柄、どんなことも興味の対象になるという。

「知りたいことができたらまず本を読む。本だけでは分からないことがあったら、著者に連絡をして会ってみる」

そんな、秋山さんにとってはあたり前の繰り返しの中から、オリジナリティの高い講義内容が、そして数々の名物講師が生まれている。

おかげさまで「ヅカ男子」になりました

シリーズ化している人気講座のひとつに「中本千晶のタカラヅカ学」がある。開講した当時はほぼ初心者だった秋山さんだがすっかり夢中になり、いまや「ヅカ男子の会」の会長だ。「宝塚歌劇劇団とは?/トップとは?/脚本とは?」などを知るための初級コースから始まったこの講座も、いまや「宝塚の娘役とは?」といったより深いテーマをとりあげる中上級編にまで進んだ。

「宝塚が大好きになって、人生において幸せを感じられるものがひとつ増えました」

写真提供=麹町アカデミア
初級コースから始まった「中本千晶のタカラヅカ学」の講座。その後、中・上級編も開催された

事務局の山仲さんも、興味の幅がぐんと広がったという。

「以前は興味がなかったことに、講座で接点を得て以降、親しむようになっています」

能楽師の観世流・武田宗典氏を招いた3回連続の「能~入門講座」の準備の際には人生で初めて舞台観劇を体験した。前述の絵を見る講座などにも感化され、どちらかというとアートには関心が薄かったのが、美術館のめぼしい企画展に足を運ぶようになった。

ふつう事務局というと雑用も多く、責任も重い、大変な仕事である。でも山仲さんはほんとうに楽しいと言う。事前の打ち合わせも楽しいし、終わってからの打ち上げも楽しい。それも「徹頭徹尾、自分たちの楽しみのためにやっている」からだろう。

自分たちが楽しむのがいちばん、という秋山さんと事務局の山仲喜美子さん

いまは月1回程度の開催だが、秋山さんは「可能なら毎日でもやりたい」と言う。「徹子の部屋」ならぬ「進の部屋」だ。

森羅万象、あらゆるテーマを取り上げていろんな意見を交わし合いたいという。

「だって、僕が楽しいから!」

▼麹町アカデミアのホームページはこちら

秋山 進(あきやま・すすむ)
麹町アカデミア学頭
リクルート入社後、事業企画に携わる。独立後、コンサルタントとして、各種業界のトップ企業からベンチャー企業などのCEO補佐、事業構造改革、経営理念の策定などの業務に従事。現在は、リスクマネジメント、BCP、コーチング、人事制度構築などのプロ集団であるプリンシプル・コンサルティング・グループの代表を務める。京都大学卒。

著書に(共著含む)『「一体感」が会社を潰す』『社長!それは「法律」問題です』『職場のやりづらい人を動かす技術』などがある。


山仲 喜美子(やまなか・きみこ)
麹町アカデミア事務局
リクルート入社後、新規事業開発、システム開発、事業統括等に携わる。ブライダル企業に転じて経営企画、商品企画などに従事。現在は麹町アカデミア事務局と並行して屋外広告取引市場JAODAQ運営ベンチャーのジャオダックにてディレクターとして事業全般から総務まで担当。東京大学卒。
【関連記事】
「情報源は本より人」だと言い切る図書館の価値
客をルールで縛る酒場にいい大人が集まるワケ
五輪招致で痛感、日本人に足りない「教養」とは
こち亀「両津勘吉と作者のたった1つの共通点」
「教育熱心な親の子」が4年生で潰れる根本原因