イベントの成否はどこで判断すればいいか。伝説として語り継がれる「大人の学び場」を主催していた立教大学の中原淳教授は「参加者はつまらないと思っても、主催者に面と向かってそれを言わない。『目からウロコでした』という感想があったら要注意だ」という——。

日本にも開かれた大人の学び場を

僕は2006年から3年間、「ラーニングバー」という実験的な学びの場を主催していました。そのヒントとなったのが、ボストンのMIT(マサチューセッツ工科大学)に留学していた当時によく参加していた、MITキャンパス内、ハーバード大学界隈でのオープンな研究会やフォーラムです。

大学のウェブサイトにはイベントスケジュールが公開されていて、学者だけでなくアーティストや企業幹部、時には元大統領といった多彩な人々が毎日のように訪れていました。参加者も学生だけではなく、仕事帰りのビジネスパーソンや、近隣で働くコンサルタント、NPO関係者などもディスカッションに加わっていました。

プリヤ・パーカー『最高の集い方 記憶に残る体験をデザインする』(プレジデント社)

シリアスなテーマを開かれた場で、しかも時にはワインを飲みながらリラックスした空気の中で語り合う。そういう「組織を越えた大人のための学び場」を日本でもつくれたら、と思ったのです。

帰国後の職場となった前職の東京大学ではじめたラーニングバーは、人事・人材開発・組織開発の最先端のテーマで、参加者の方々が対話することを目的としていました。最初は研究者中心とした10人前後の参加者を集めていました。口コミで人気が出てどんどん参加者の人数が増えていき、最終的には200人の枠に対して800人以上の応募が来るようになりました。

なぜそこまで参加者が集まるようになったのか。ひとつには、当時としてはかなり斬新な運営の仕方をしていたからだと思います。

写真提供=中原研究室
ラーニングバーの会場内にはバーカウンターが設けられ、ビール、ワイン、お茶、おにぎり、お総菜などが並べられた。飲食は対話を深めるためのツールとなる