六本木ヒルズの会員制図書館「六本木ヒルズライブラリー」では、毎日さまざまなイベントが開催され、施設の強みとなっている。企画者であるライブラリー事務局の熊田ふみ子さんは「アイデアの種を育てるための情報源は、本よりも人から入るものがいちばんだ」という——。
会員制の六本木ヒルズライブラリーの蔵書は1万2000冊。「自律した個人が、知識や情報を交換する場」としてさまざまなイベントが開催されている。

日常と非日常が切り替わるライブラリー

明るく開放的でありながら、とても静かな空間のなかにゆったりと書棚が並ぶ。紙箱に入った古典的名著もあれば、最先端の情報を紹介する本もある。「蔵書は1万2000冊です。新しい本を入れたら、古いものは処分する。増やさないと決めています」と、六本木ヒルズライブラリーの中を歩きながら熊田さんが教えてくれた。

選書の基準は、知的ワクワク感を感じられるかどうか。「人が成長するときに、こういう本があったらいいよね」というものをそろえている。独自のルールで並べられた本は、タイトルを眺めているだけでも少し心が高揚する。熊田さん自身もアイデアが出てこないときなどは、館内を一周するそうだ。

2005年にこのライブラリーの運営を担当することになって以来、熊田さんたちが大切にしているのは「六本木ヒルズの中にある会員制のライブラリーである」ということだ。他のどんな図書館とも違う、唯一無二のものでありたい。

「森ビルという会社には、街づくりは人づくりだという大きなビジョンがあります。場所が人をつくる。じゃあ、ヒルズはどんな場所であるべきか? “ヒルズらしい”ということが何を決めるときにも大きな柱になっています」。

プリヤ・パーカー著・関美和訳『最高の集い方 記憶に残る体験をデザインする』(プレジデント社)

熊田さんの考える「ヒルズらしさ」、それはライブラリーの本の選書基準と同じ「知的ワクワク感」だ。

「49階までエレベーターで上がる間に、日常と非日常が切り替わる。ピンと背筋が伸びて、今よりもっと素敵すてきになりたいと思えるような空間であってほしいんです。そしてそこで素敵な人に会えた、知らないことを知った、新しい自分を発見した、という成長につながる喜びを感じてほしい」

人は、場所や周りの人たちに感化されて変化していく。だからこそ、六本木ヒルズライブラリーは人の持つ素直な向上心を応援する場所でありたいと願っている。