初めて「特定非常災害」に認定された台風19号

今年(2019年)10月12日に日本に上陸した台風19号は、各地で激しい雨を降らせ、甚大な被害をもたらした。消防庁(10月23日現在、第22報)によると、死者は74人、行方不明者は9人。政府はこの被害を台風としては初めて「特定非常災害」に認定した。

台風の被害を減らすためには、河川整備など「ハード」の対策だけでなく、天気予報など「ソフト」の対策が欠かせない。

かつて「天気予報」はよく外れていた。例えば気象庁の発表データでは、時期による増減はあるが、降雨や最高気温に関する予測確率は、1988年と2018年では各段に的中率が高まっている。「降水」は平均で約80%→約88%の的中率に、「最高気温」は同2.0℃→1.5℃の誤差となった。これらは年平均なので、体感ではかなり当たるようになったと感じる人も多いだろう。

写真=時事通信フォト
台風19号の大雨の影響で阿武隈川(右)が氾濫し、浸水した福島県郡山市付近=2019年10月13日

「観測データを増やす」から「AIで分析精度を高める」へ

筆者は台風19号の上陸前、こうした気象予測の最前線について取材していた。そのときのテーマは9月9日に上陸した台風15号だった。大規模な停電を引き起こし、多くの人が長期間にわたり不自由な生活を強いられた。

気象情報を発信するのは気象庁だが、公的機関だけでなく独自に情報を発信している民間企業もある。そのひとつである「ウェザーニューズ」(以下、文脈によってWN社。コンテンツ名は「ウェザーニュース」)は、従来型の「観測データを増やす予報」だけでなく、新しくAI(人工知能)によって観測データの分析精度を高める予報を導入しつつある。

台風15号での気象予測を例にとりながら、従来型とAI型、それぞれの気象予測の最前線を紹介したい。