1日18万件の「人力データ」を気象予測に生かす

現在の主流である従来型の気象予報では、観測データが多ければ多いほど、予報精度が上がると考えられている。

WN社のグローバルセンター(千葉県千葉市美浜区)では高層ビル上階フロアから太平洋が一望でき、フロア内に並ぶ大画面には国内外各地域の気象状況が映し出される。海外駐在員も多く、年中無休24時間態勢で世界中の気象を観測し、予報する。

ウェザーニューズのグローバルセンター
撮影=プレジデントオンライン編集部
ウェザーニューズのグローバルセンター(千葉県千葉市美浜区)

同社はこれまでデータ収集を増やすため、ハードとソフト両面を整備してきた。ハード面は、例えば超小型の気象レーダーを開発し、各地にネットワーク的に配置した。ソフト面では、国内各地域に住むサポーター(1900万ダウンロードの同社のアプリ「ウェザーニュース」のうち希望者)が、雲の動きなど天候の変化を撮影。“ウェザーリポーター”として画像やリポートとして送信。その数は1日平均18万件、最高で25万件になる。そうして収集した実況データを分析し、気象予測に反映するのも得意だ。

昔は無料だった「天気予報」情報を、さまざまな「気象情報」コンテンツにし、法人や個人の顧客に販売するのが同社のビジネスモデルで、最新の業績は170億5200万円(2019年5月期)だ。異常気象の観測から広域気象の観測まで、活動範囲は幅広い。

「過去の台風」の画像解析から進路を予測する

そのやり方を変えるのが「AIによる気象分析」だ。例えば、従来の観測データによる気象予測計算に加えて、AIを駆使して、今後の雨雲の分布を画像解析から予測する。これにより、さらに正確な情報を迅速に発信することが可能となった。

「AIだから、新しくわかることもあります」

こう話すのは、石橋知博氏(ウェザーニューズ・執行役員。モバイル・インターネット気象事業主責任者)だ。どういうことか。

石橋知博氏
撮影=プレジデントオンライン編集部
石橋知博氏(ウェザーニューズ・執行役員。モバイル・インターネット気象事業主責任者)

「例えば、類似する過去の台風を参考に予測を行う方法があります。台風本体だけでなく周囲の気圧なども必要ですが、衛星画像等の画像解析により、似たパターンの台風を精度よく抽出できるのではないかと考えられます。現在は数値予報モデルによる論理的な計算での予測が主ですが、AI予測が進めば、ピンポイントの台風予測が可能になるかもしれません」