「ウチの地元はどうなる」に答えられるか
多くの人が気になる「台風情報」は、刻一刻と変わる。特に知りたいのは、自宅や勤務先・通学先の状況だろう。ただし、ピンポイントの予測は道半ばだ。
「現在のスーパーコンピューターが行う台風予報では、台風により、私の街に、家屋やライフラインにどの程度の被害があるのかは、直接的にはまだわかりにくいところです」
こう説明しつつ、石橋氏は今後の情報技術の進化に期待を寄せる。
「ただし、過去の台風の進路や勢力とともに、実際に観測された風速や雨量、台風による各地の被害をビッグデータとしてAIに学習させることができれば、台風の進路や勢力に合わせた、一人ひとりのための被害予測の実現が期待できます。例えば、昨年の台風21号・台風24号、今回の台風15号で弊社が行った停電の調査からは、最大瞬間風速と停電被害との関係が徐々に見えてきています」(同)
人力入力の情報とAIの画像分析を相互補完させる
台風15号の停電報告と暴風エリアの関係については、同社のウェブサイトでビッグデータ分析の結果が公開されている。
10月12日に日本に上陸した台風19号でも、10万人を超えるユーザーから浸水/冠水・暴風被害・停電に関する約35万件もの回答が寄せられ、冠水の状況などを速報した(リンク先は15日時点での一次集計の結果)。
同社は「台風が地上に近づいてからは、さまざまな機器に搭載されたIoTセンサー(スマホの気圧計などもその一つ)のビッグデータ分析から、予測を行う」ことも進める。前述した、ウェザーリポーターからの情報も有力コンテンツになりそうだ。
「AI」が進化すれば、これまでの気象予報士に代表される「ヒト」は不要なのだろうか。そうとも言い切れないそうだ。
「天気予報の精度は、予報を計算する上でのデータの多さが決め手となります。予報の計算の基となる情報がリアルで多いほど、計算結果はリアルに適したものとなり、より気象情報の精度が増す。当社が1日約18万通の天気報告を寄せる“ウェザーリポーター”の協力を仰ぐのはそのためです。一方、AIは学習能力がケタ違いですから、学習する元データがきちんとしていれば、より効果を発揮します」(石橋氏)
つまり相互補完する存在なのだという。前述したように、AI分析により、これまで気づかなかった部分も解明されてきた。問題はこの先だろう。