40代の親が子供の教育に熱くなる必然的理由
こんな話をすると「そんなこといっても、受験は受験だし、仕方ないじゃないか」という声が聞こえてきそうですね。その反論にお答えする前に、みなさんが、なぜ教育に熱くなるのか、世代的な面から考えてみましょう。
おそらく読者の方々の多くが、40代。この世代の人たちには「親の世代の学歴を、子供が上回るのは当たり前」という刷り込みがあります。自分の親は団塊の世代前後でしょう。団塊の世代には学力があっても、満足な教育を受けられなかった人も多いです。そのため彼らの多くが「自分より上の学歴を子供につけさせてやりたい」と熱心に教育をしたのです。
今の親世代は「自分はそうしてもらった」という強い記憶に加えて、バブル崩壊以降の就職難の経験があります。多くの親が「わが子が、自分たち以上の生活水準を得ることができないのではないか」という危機感を抱いており、その恐れが「せめて学歴だけでも」と、子の学歴へのこだわりを一層強くしています。
1985年の男女雇用機会均等法以降の世代ゆえ
女子の場合はもう一つ親が教育に力を入れる理由が加わります。それは、母親世代が性別を理由に、満足に働けなかったということです。今の大学生の親より下の世代は、1985年の男女雇用機会均等法以降の世代です。
しかし、均等法にはほとんど実効性がなく、企業では多くの女性が従来通りの差別を受けました。総合職に就ける女性はひとにぎり、女性は一般職雇用で給与は低く、男性と同じようには昇進できません。結婚したら働き続けるという選択肢は現実的ではありませんでした。こうした社会でも娘が働いていけるような進路を親は必死に考えます。その結果が現在の女子受験生の学部選択にあらわれています。
90年代以降、女子学生の増加が著しいのは、法学部や医学部といった資格取得に直結する学部です。つまり個人プレーがききやすい「手に職」系の学部です。弁護士と医者は、高給版「手に職」志向、ほかにも薬剤師や看護師などの資格志向があります。反対に、組織に入らなければ成果を上げられない経済学部や工学部はあまり女子学生が増えていません。
「手に職があれば、組織に組み込まれなくてもすむ。転退職しても再就職が容易。私は果たせなかったけれど、社会で活躍してほしい。私が企業社会で受けた嫌な思いをしてほしくない」という「母心」が透けて見えるようではありませんか。
こうした世代の影響力は強いですよ。その人にとっては、自分が生きた時代というのは、唯一の経験だからです。だから、一昔前の「良い学校、良い就職」という幻想から抜けられないのです。
しかし、時代は変わりました。