「カツマーほどに頑張れず、カヤマーでも救われず――。そんな若い世代が増えているのでは」と、ビジネスアナリストの中川美紀さんは問いかける。
キャリアカウンセリングやセミナーの仕事を通して毎年1000人以上もの若者に接する中川さん。「ワークライフバランス」の充実が求められる一方で、その流れに便乗して働かない自分を正当化し、ライフの充実ばかりを求める“仮面弱者”が多いと感じるようになった。そこで、働くことの意義や働きがいを見出せない大学生や社会人に向けて本書を執筆した。
「仕事にきちんと向き合っていなかったり、結果を出せていないのは自分が一番よくわかっている。できることなら仕事に充実感を持ちたいと思いながらも、自分の気持ちをごまかして生きているところがあります」
そこで中川さんは「ワーク=ライフ」を提唱する。「好きなこと」ばかりで仕事を選ぶのではなく、自分ができることを見つけ、自分から仕事を好きになるよう取り組む。そして、仕事を人生の目的に据え、一生懸命働くことで充足感が得られるようになれば、収入やポジションもついてくるという考え方だ。
「カツマーとカヤマーはある意味両極端な存在。『ワーク=ライフ』は一見地味ではあるけど、その間をつなぐ役割を果たすのではないでしょうか。大多数の人たちはそこにいるはずです」
20代前半の人たちに読んでもらいたくて執筆したものの、意外にも管理職や経営者からの反響が大きかったという。
「企業も若手の育成や活用に危機感を持っています。でも、若手におもねる部分が意外と大きいのでは。甘やかしても本人のためにはなりません。叱るべきところは叱り、働くことの意味を伝えるべきでしょう」と語る。
もちろん、中川さんは若者のいい点にも目を向けている。
「社会に貢献したいと純粋に考え、出世やお金を第一の目的にしていない人も多い。身近な人が一生懸命働く姿勢を持って若者に伝えていったり、時間をかけて向き合うことで、彼らも仕事の楽しさに気づくでしょう」
そんな中川さんはかつて、教職を志望していた。縁あってコンサルティング会社に入社し、様々な業務に携わるうちにアナリストという仕事の面白さや、やりがいに気づくようになった。社会人10年目の今、大学生や若手の社会人に対して、「何のために生きるのか、働くとは何か」を見据えたキャリア教育に携わりたいと考えている。まさに中川さん自身が「ワーク=ライフ」を体現しているのだ。