訳者本人も図の使い方に関する著書『図で考えるとすべてまとまる』を2年前に出版している。本の翻訳は初めてだ。
「私が教えている資料づくりのセミナーに編集者さんがきていて、この本のことで声をかけてもらったのが、きっかけです」原著者のドナ・M・ウォン女史は、ウォールストリート・ジャーナルでグラフィック編集のディレクターとして活躍するインフォメーション・グラフィックスの第一人者だ。
「ここまで基本をぴちっと書いた図解表現の本は、見たことがなかった。どのタイプのグラフを選ぶのかとか、グラフの色使いはどうするのかとか、資料の中の文章の書き方をどうするのか。教科書的に多くの人に使ってもらえると思いました」
たとえば母数が違うデータの円グラフを、同じ大きさの円で並べるのは「悪い図表」。棒グラフの軸がゼロから始まっていないのも、マイナスのデータの柱を右に伸ばすのも反則だ。
「では、そんなときどうするのというアドバイスとノウハウが書いてある。いまから考えると、私も縦棒グラフと線グラフの違いくらいは体系的に押さえておけばよかったなと思います」
縦棒グラフは量や、量の変化を表すときに使う。一方、トレンドにフォーカスしたいときに使うのが線グラフだ。
辻調理師学校で調理師免許を取得後、アメリカのブラウン大学でアートを専攻。経歴には「異色のコンサルタント」とある。帰国後はJPモルガンを振り出しに、ボスコン時代には1万枚以上のプレゼン資料を作成。まさに現場の第一線で、ビジネスで使える図解表現の技術を習得し、磨いてきた。
「図表ソフトの弊害だと思うのが、3Dの図。この本の中にも悪い例で登場していますが、グラフの最上部がどこかわかりにくくなるだけ。私が図をつくるときは、まずは手書きです」縦棒グラフは芸術作品ではないので、影は不要だ。本書の冒頭に「そもそも、あなたのもっている情報は、わざわざ図表にするのに値するものでしょうか?」とあるのも耳が痛い。
「本気で図をつくろうと思ったら、頭を絞って脳に汗をかくというのでないとムリ。だから私のセミナーでも必ずワークを入れるようにしています」
最後に、どこから始めてよいか悩む人へのアドバイスは?
「どの図を使ったらよいかがわからないときは、まず当て込んでみる。数を重ねれば、このときはこの図というのが、すっと出てくるようになります」