東京・池袋で消費者金融業(通称:街金)を営むテツクル氏のもとには、さまざまな理由で多額の借金を抱えた人が訪れる。今回の客は、悪徳業者にだまされ債務が8億円にまで膨らんでいた。男性にいったい何が起きたのか——。
※本稿は、テツクル『ぼく、街金やってます』(ベストセラーズ)の一部を再編集したものです。
にこにこしながら近づく人には気をつけろ
お金持ちの人がいたら、ぼくはこう言います。
にこにこしながら近づいてくる人には気をつけたほうがいいよ。
ただの空き巣や強盗に入られるくらいだったら、身ぐるみはがされることはたぶんありません。人間が持ち出せる量には限界がありますから。殺されなければ、かすり傷。
でも、にこにこしている人たちが使うのは力ではなくて、アタマです。アタマを使って、あなたの資産を根こそぎ狙ってきます。
Gさんは、地方都市の地主のひとり息子でした。地主といっても、そのへんの自称地主ではなく、本物のザ・地主です。
自宅の敷地は1000坪くらい、門から80メートルくらいの奥まったところに大きな屋敷があり、そこが住まいです。その周りにアパートや駐車場も持っています。
物静かで、世間知らずのGさん。服装や持ち物にも無頓着で、とても莫大な資産を持つ人には見えません。
そんなGさんがぼくのところに来たのは、借り換えの申込みでした。謄本を見ると、広大な土地やアパートを担保に、短期間に借り換えを繰り返しています。
一緒に来たブローカーの隣にちょこんと座るGさん。
「えーと、借り換えですよね」
「……はい」
「なんでまた借り換えするんですか? この前もしてません?」
「大丈夫です、支払いはできますから……」