街金の次は反社会的勢力からも借金
何かおかしい。借り換えすれば、紹介したブローカーには手数料が入ります。
「いい条件で貸してくれるところ、紹介するから」
うまいこと債務者を言いくるめて、必要のない借り換えを繰り返させて借金を膨らませていく悪徳ブローカーというのは確かにいます。
借りる額が多ければ多いほど実入りも増えるので、ブローカーも頑張ります。理由はわからないけど、Gさんの意思とは関係なく借り換えをしている感じです。
でも担保もあるし、本人が借りたいと言ってるんだから、貸しました。街金ですから。
そんな温厚で実直そうなGさんだったのに、予想外の事件が勃発しました。ぼくが設定した抵当権の次に、反社のフロント企業の抵当権が設定されたんです。お屋敷に乗り込み、一括返済を求めます。
「Gさんさ、反社の人から借金したよね? そんな債務者とはもう付き合えないから、いますぐ全額一括で返してよ」
「いや、無理ですよ、そんなの」
「あのね、契約書に反社条項ってあるの。Gさんがルール破ったんだから。いますぐ返せって言ってるんだけど」
「そんなの知りませんよ」
「いやいや知らないって何? ハンコ押してるのおまえだろ! 眠たいこと言ってんじゃねーよ! 返せないならまた借り換えしろよ」
「いや……だって……すぐには……」
「あのさあ、いい加減にしろよこの(自粛)」
Gさんをなだめすかしてよそで借り換えさせて、無事回収完了。
取り立てた後に首をつって自殺
Gさんのことも忘れかけていたころ、Qさんという弁護士から電話がありました。
「わたくし、Gさんの財産を管理している者ですが、テツクルさんはGさんのことご存知ですよね?」
「あー、あの地主さんね。昔、ウチのお客さんだったかな」
「亡くなったんですよ、首つって自殺です」
「はい?」
街金で働いていると、債務者の死にぶつかることがたまにあります。でも、ぼくが取立て厳しくやりすぎて、というのは一度だってありません。本当です。
「そうですか、ご愁傷さまです。で、何か?」
「テツクルさん、Gさんに何かひどいことしてませんか? たとえば取立てのときとか」
屋敷に乗り込んだときのことが頭をよぎります。でも違法行為はしてないし……。ちょっと怒鳴ったくらいだし……。
「いやいやいや、そんなことするわけないじゃないですか。闇金じゃないし。確かにトラブルはあったけど、そこはちゃんとした話し合いで解決を……」
「実はGさん、毎日細かく日記をつけていて、そこに『テツクルのやつにひどいことを言われた。あいつだけは許せない』とか、すごく細かく書かれてるんですよ、(ピー)と言われたとか、(ピー)と怒鳴られたとか……。ちょっと話を聞きたいんですが」
「日記? なんすかそれ……」
滝汗です。
Gさん、そういうのは墓場まで持っていって……。