天職はどうすれば見つかるか。マーケティング精鋭集団「刀」代表取締役CEOの森岡毅氏は、「まずは好きを“動詞”で書き出してみてください」という。その理由とは――。
撮影=松林真幸
戦略家であり稀代のマーケター・刀代表取締役CEOの森岡毅氏

キャリア形成に不可欠な「自己マーケティング」

私は現在、マーケティングの精鋭を集めたプロフェッショナル集団「刀」を主宰し、さまざまな企業の経営戦略、マーケティングをサポートしています。商品やサービスを人々の頭の中で「ブランド」に創り上げていくマーケティングの技術は、実は個人のキャリア形成にも極めて有効です。自分自身を人々の頭の中で「ブランド」にしていくのは、いわば「自己マーケティング」。そのカギとなるのは「自分の強みが何か」を把握し、その強みを活かすことができるのかということ。本書も、そうした観点から書き上げたものです。

しかし、かくいう私も、最初から人生が100%うまくいったわけではありませんでした。本のタイトルにもつけたように、若かりし頃は多くの人たちと同様に、仕事でもがき、人生に迷った苦節の日々がありました。

私は大学卒業後、外資系の大手生活用品メーカーに入社したのですが、ビジネスパーソンとしてのキャリアは、決して順風満帆ではありませんでした。

仕事に追われる毎日が続いたせいか、ストレスで電話が怖くなり、受話器を取れなくなったこともありました。せっかくブランドマネージャーに昇進したものの、初めて手がけたブランドが不評で、撤退を余儀なくされたこともありました。米国本社では、米国人たちに目の敵にされ、足を引っ張られた経験もあります。

人生は、自分自身で選び取ることができる

そんな私でも、外資系メーカーでは幹部にまで昇進し、USJの経営再建というビッグプロジェクトにも、携わることができました。人生で紆余曲折があったにせよ、こうして今までやってこられたわけです。私だけではなく、多くの人々が大なり小なりの苦労をしながら、それでも何とかやっている。だから、今苦労している皆さんも、人生を簡単にあきらめる必要はありません。

確かに、人生の一寸先は闇です。外の世界は「残酷」で、不平等な現実が待ち構えています。しかし、人生は誰からの指図も受けず、自分自身で選び取ることができます。人生を決める際、自分なりに考え抜いて、最善の選択をしたのなら、たとえ結果がうまくいかなかったとしても、納得ができます。それに、1回や2回の挫折で、人生が終わることはありません。その気になれば、何回でも軌道修正できるのが、人生なのです。

それでは、私のトライアル&エラーの経験も踏まえた、自己マーケティングの方法論とは何なのかを、ここで簡単にお話します。