管理職の仕事とはなにか。それは優秀な部下を育成することだ。ところが「自分自身は部下より優秀」「管理職は『あがりのポスト』」という誤解をしている管理職が少なくない。ゼネラル・エレクトリックで人材育成研修を行っていた田口力氏は、「そんな管理職には誰もついてこない」と説く――。

※本稿は、田口力『世界基準の「部下の育て方」』(KADOKAWA)を再編集したものです。

マネジャーが会社で「表彰」される理由

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Dean Mitchell)

今から3年後のある日、あなたは最優秀マネジャーとして会社から表彰されることになりました。広報部から社内報に記事を掲載したいとの申し出があり、インタビューを受けることになりました。あなた自身はまだ、表彰の理由を聞かされていません。

インタビューの質問は次のように始まりました。「今回表彰を受けることになった最大の理由は何だと考えていますか。また、それはどのような努力によって成し遂げられたのでしょうか」。

あなたはこの質問に対して、何と答えるでしょうか――。

部下の育成は企業にとっても喫緊の課題

これはマネジャー研修の最後に、私から参加者に対して行う質問です。この記事を読んでいただいている方であれば、その答えは「数多くの優秀な部下を育成したこと」になるでしょう。

実際の研修で同じような質問をすると、参加者全体の6~7割が「部下育成によるもの」と回答します。これは、マネジャーたちにとって部下育成が最も重要な課題であり、本人もそれを認識しているということを表しているのは言うまでもありません。

また、現在の日本では、「組織としての生産性の向上」という話題はもちろん、「人手が足りない」「いい人材を探せない」「人材流動性が高く、社員が定着しない」といった企業としての悩みが取り沙汰されています。こうした状況を打開するためにも、人を教え導き、育てることの重要性はますます増しています。

「部下の育成」は、マネジャー個人にとっても、企業にとっても喫緊の課題なのです。