GEは「人材開発に年間10億ドル」を投資する

「部下育成」の課題に対する処方箋のひとつは、「年間10億ドルを人材開発に投資」し、リーダー輩出企業として高い評価を得ているGE(ゼネラル・エレクトリック)にあると私は考えています。

田口力『世界基準の「部下の育て方」』(KADOKAWA)

私は7年半にわたり、「世界最高のリーダー育成機関」と言われる、GEのクロトンビルで、幹部から若手リーダーたちまで各階層の選抜メンバーを育成しました。

GEでは各階層の上位約10%にランクされた社員だけが、クロトンビルの研修に参加することができます。そして参加者に共通して見られた特徴は、高い業績を挙げたということだけでなく、部下の育成に真剣にコミットして実行するということでした(だからこそ研修に選抜されたという見方もできるでしょう)。

私は「部下育成」について研修で教えながら、高い業績を上げるビジネスパーソンの「部下育成」に対する考え方や取り組みを知る機会に恵まれたのです。

GEから独立した後は、世界基準としてGEで教えてきた部下育成に関する方法論や考え方を、日本企業に対して導入してきました。その時に感じた私の驚きは、「グローバル展開している欧米企業では常識とされている方法論や考え方が、同じくグローバル展開している日本企業においてはまったく知られていない」というケースがとても多くあるということです。

基本的な「管理職の責務」についての考え方もそうです。

優れた管理職はまず「自己の成長」を重視する

私はGEに入る前までの約20年間、日本企業を対象とした管理職研修の冒頭で「管理職の3大責務」について教えていました。

その3つとは、「(1)業績目標の必達」「(2)組織の活性化」そして「(3)部下の育成」です。組織の一員として働く管理職であれば、この3つは世界中どの企業で働いていても組織から求められるものです。

ところがGEに入ってみたら、この3つだけでは足りないということを実感しました。

もうひとつ必要なのは「自己の成長」です。GEではこれを、「3大責務プラス・ワン」という表現で教えていました。

管理職になると部下の育成という責任が生じるため、「育成」というテーマの焦点は部下に当てられ、ややもすると自分を成長させることに対する関心が無意識のうちに薄れてしまいます。

しかし、管理職や経営幹部が部下育成に関してまず行わなくてはならないことは、自分自身が積極的に学んでいるという姿を見せることです。自分の上司が進んで学んでいる姿を見れば、部下は自然とその姿勢を見習います。