寄進が非課税になるお寺の要件とは?

亡くなった親の家を相続したものの住む予定はなく、放置したまま……。そんな「困った空き家」をお寺に寄進するというのは、何やらよきことをしているようで、素晴らしいアイデアのように思えてくる。しかしスマートに手放すには、いくつかのハードルを越えねばならない。

まずは税金である。不動産を寄進すると、対価なしに渡すにもかかわらず「通常価格で売買したものと見なされて」、含み益に譲渡所得税がかかる。所有期間が5年を超えれば20%、5年以内なら39%と、かなりの高率だ。ただし、たとえば親と同居していたマイホームであれば、含み益が3000万円以下なら譲渡所得税を非課税にできる特例がある。また空き家に対しても、2019年の年末までの譲渡なら特別控除がある(※)。

※編集部註:その後、特別控除は2023年12月31日までに延長されている。

もしも寄進する先の宗教法人が「専任役員の定数が6人以上」「監事及び評議員会が設置される」などの要件を満たした大規模法人であれば、これらの特別控除を使わずとも譲渡所得税が非課税になる。しかしこの要件に合致する大規模な宗教法人はごくわずか。いわゆる住職と副住職と寺庭婦人の数名で運営されているようなお寺のほとんどは、この要件からは外れている。

何より高いハードルは、お寺側がその不動産を欲しがっているかどうかだ。「不動産をタダであげるのだから、喜ばれるだろう」と思うかもしれないが、実際はそうとも限らない。寄進を受けた寺には、その不動産を登記するとき評価額の1000分の20の登録免許税がかかる。これを非課税にするためには、寄進された不動産を宗教法人の用途に使わないといけない。賃貸して家賃を得たりしようとするなら何十万円もの登録免許税を払う必要があるし、リフォームも必要、所轄庁へ収益事業を新たに追加する旨の申請などもしなければならない。

相談すべきは「開かれたお寺」をめざす住職

こうしてみるとハードルは高いが、最近は「開かれたお寺」をめざし、檀家や地域の住民がいつでも自由に出入りできるような場所を求めているお寺もある。このようなお寺が近くにあり、3000万円控除の特例が利用できそうなら、住職に相談してみる価値はあるだろう。特別控除をしても税額が負担になるなら、寄付先を修行道場のような大規模なお寺にするか、お寺にこだわらず公益社団法人、公益財団法人などに範囲を広げて検討してみてもいい。ただし、いずれの場合も非課税となるには複数の要件が必要なので、税理士への相談は必須だ。

子どもがなく、自分の死後、所有している不動産が国庫に渡るくらいなら、世話になった菩提寺に寄進したいという場合、端的に言えば、生前に現金化してお布施にするのがベストだ。お布施なら非課税で、お寺側も使途を限定されない。

日本の現行の制度は、英国や米国などの海外に比べると、圧倒的に寄付がしにくい。これも空き家が増加する一因になっている。今後、制度が改善されることを望まずにはいられない。

年内の売却は3000万円の控除あり。大規模法人なら所得税は非課税に

勝 桂子
行政書士
2007年、「こちらOK行政書士事務所」開設。葬祭カウンセラーとしても活躍する。著書に『心が軽くなる仏教とのつきあいかた』(啓文社書房)など。