数百万円の慰謝料は例外的なケース

もしあなたが「パワハラを受けている」と感じたら、どのような行動をとるだろうか。社内にコンプライアンス窓口や信頼できる上役がいれば、相談することで職場環境が改善するかもしれない。しかし、それでもらちが明かないとか、実効性のある相談相手がいないとなると、休職や退職に追い込まれるだろう。そこで、裁判を起こすことも選択肢の1つとして視野に入ってくる。

ただし、「自分が不当に思うこと=パワハラ」となるわけではない。判断が難しいのが言葉による暴力で、人格否定や名誉毀損に当たるかどうかがポイントになる。「給料泥棒」「新人以下だ」「辞めてしまえ」などの言葉はNG。「バカ野郎」も、それが日常的に繰り返されるとなれば、パワハラに該当する可能性が高まる。録音、メール、詳細な記録メモ、被害の様子がわかる写真など証拠になるものはしっかり残しておきたい。

では一体、裁判まで起こして、慰謝料はどれくらいもらえるものなのだろうか。暴行により後遺症が残るほどの傷害を受けたり、言葉の暴力で精神疾患や自殺に追い込まれたりした場合などは、数百万円から数千万円となるケースもある。

しかしそれは例外的なケースで、じつのところ、パワハラによる慰謝料は基本的に安い。10万~20万円などというケースも珍しくなく、裁判費用を考慮すると赤字になりかねないのが現状だ。

慰謝料がおしなべて少ないとはいえ、状況次第では慰謝料+αによって、ある程度まとまった額を手にすることは可能だ。パワハラが起こるような職場では、不当に残業代が支払われていないケースが多い。であれば、未払い残業代とセットで訴えることができる。

また、パワハラを実行した個人だけでなく、会社(法人)も一緒に訴えるという方法もある。個人に慰謝料を請求する場合の時効は3年で、法人は使用者責任としての時効こそ同じく3年だが、安全配慮義務に関する時効が10年ある。支払い能力は一般に個人より法人のほうが高いと考えられるので、連帯して慰謝料請求するのが得策ということになる。

対応を怠った企業には、慰謝料を上乗せできる?

ちなみに、ハラスメント裁判において、セクハラはパワハラの一歩先を進んでいる。もし、セクハラをきっかけに会社を辞めざるをえなくなった場合は、「逸失利益」として慰謝料+半年~1年分の給与相当額が支払われるケースもある。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/TerryJ)

また、被害者が社内のしかるべき人物に相談したにもかかわらず、会社が何も対応しなかった場合、男女雇用機会均等法の「セクハラ防止措置義務」を果たさなかったと判断される。そうなると、セカンドハラスメントとして認定され、慰謝料が上乗せされる。パワハラについても、今国会において企業の措置義務が法制化されるとの見方が有力だ。そうなれば、パワハラの慰謝料も上乗せが期待できるだろう。

パワハラだけでは10万~20万円。未払い残業代とあわせてまとまった額を請求

新村響子
弁護士
旬報法律事務所所属。2002年、一橋大学法学部卒業。05年、弁護士登録。東京弁護士会所属。専門は労働。