日本では7割の人が中小企業で働いている。だが中小企業は大企業に比べて「雇用トラブル」が起こりがちだ。一体どんな理由で解雇されるのか、その不当性を訴えたい場合はどうすればいいのか。不当解雇の実態とその対処方法を紹介しよう――。(後編、全2回)
※写真はイメージです(写真=iStock.com/RyanKing999)

不合理な解雇は法律で禁じられている

日本では、7割の人が中小企業で働いています。ところが中小企業は大企業に比べて、さまざまな雇用トラブルが起こりがちです。そのなかでも経営者らが「労働基準法」をはじめとする労働法を正しく理解していないため、不当な解雇を行うケースが目立ちます。

労働政策研究・研修機構の濱口桂一郎氏は、『日本の雇用終了』と『日本の雇用紛争』(いずれも労働政策研究・研修機構)という本に、中小企業のさまざまな解雇事例をまとめています。今回は濱口氏のコメントも織り込みつつ、それらから労働者の「能力」が問題になったケースを紹介します。

そもそも、会社は好き勝手に従業員を解雇することはできません。労働契約法16条では、「解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合、その権利を会社が濫用したものとして無効とする」とあります。

では逆に、解雇が適法と認められる「合理的な理由」とはどのようなものでしょうか。大きくは次の3つに大別されます。

解雇が法的に認められるケースとは

1つ目は、労働者の労務提供が不能であったり、労働能力や労働者としての適格性が欠如、喪失していたりする場合です。病気やけが、その治癒過程で生じた障害により働けなくなったり、勤務成績が著しく不良であったり、無断欠勤が長期にわたったりした場合がこれに含まれます。

2つ目は、労働者の企業秩序違反です。そうした行為に対して、会社には懲戒権が与えられています。その手段は、けん責や戒告、減給、出勤停止などさまざまですが、この懲戒処分の代わりとなるのが普通解雇というわけです(より重いものは懲戒解雇となります)。

企業秩序違反行為とは、経歴詐称、職務怠慢、業務命令違反、業務妨害、職場規律違反、会社の体面を汚す行為などです。前回紹介した労働者の「(悪しき)態度」は、この企業秩序違反行為の一端を成すものと考えていいでしょう。

最後は、経営上の必要性に応じ、非のない労働者をやむなく解雇する場合です。代表的なのは業績不振が原因となったもので、整理解雇といいます。