よその家では老後に向けてどんな備えをしているのか。4つの家計相談をケース別にみていきながら、安心家計のポイントを解説しよう。第3回は「年収1000万円で親の介護問題が浮上」というケースについて――。(全4回)
▼C家の手取り
手取り年収756万円(月額54万円+ボーナス2カ月)・専業主婦の妻と2人暮らし
手取り年収756万円(月額54万円+ボーナス2カ月)・専業主婦の妻と2人暮らし
実家に高齢の母1人、介護に帰るべき?
子どもが社会人になり、あとは自分たちの老後だけを考えればいいとホッとしていたら親の介護が降りかかってきて――、とはよくある話。
Cさんの場合、父はすでに他界しており、面倒を見るのは体が弱ってきた母親だ。
問題は、母が住む実家は遠方のため、離れ離れのまま介護をするわけにはいかないこと。退職にはまだ数年あるし、母を呼び寄せようにも、都心にあるCさん宅は母と同居するとなるといかにも手狭だ。
しかし、母には自分の生活を賄える程度の年金収入がある。また、介護が必要とはいえ、日常生活に困ったり、法的な契約が結べないほどの認知機能の低下だったりといった症状は、今のところ見られない。
そこで、母にはCさん宅の近くにアパートを借りる提案をした。余計な気遣いがいらない1人暮らしという点では、母もすぐに納得してくれた。ただ、知人のいない見知らぬ土地に移ることに対し、当初難色を示した。
年老いてからの移住は、健康を悪化させる要因になるといわれることがある。だが、介護が必要になったとき、現役世代である子ども家族の生活をできるだけ維持する方向で考えたほうが、経済面でも介護のしやすさにおいても無理が少ない。Cさんの母も、最終的にはその点を理解し、都会へ出る決意をした。
実家はといえば、解体費用を差し引いても300万円黒字の形で売却できそうだ。これも、もし母が認知症になっていたら勝手に売却したりできないから、空き家のまま放置することになっていたかもしれない。そうなれば、近所に迷惑をかけたり、6倍もの固定資産税を支払わなければならなくなっていた可能性がある。