よその家では老後に向けてどんな備えをしているのか。4つの家計相談をケース別にみていきながら、安心家計のポイントを解説しよう。第4回は「年収1200万円で子育て終了」というケースについて――。(全4回)
▼D家の手取り
手取り年収880万円(月額55万円+ボーナス4カ月)・専業主婦の妻と二人暮らし(娘は昨春社会人になって独立)

第2のハネムーンを満喫しすぎは危険

1年前に子育てから解放されたDさん夫婦は、それまで子どもにかかっていた教育費を自分たちの趣味や嗜好品に費やし、豪華客船での世界一周を計画するなど、夫婦2人の生活を満喫していた。まだ55歳、老後や介護なんて先の話としか考えていなかったのは当然かもしれない。

D家のように、子育てに一段落して第2のハネムーンを謳歌する夫婦はかなり多い。年間100万円以上かけていた教育費が不要になり、ある程度の貯蓄もある、そのうえ親の介護問題も浮上していない。こういった家庭では、自分たちへの贅沢だけにとどまらず、わが子への生前贈与を検討したりしてしまい、老後のためにとっておいたほうがいい貯蓄まで崩してしまいがちである。しかも自分たちに危機感がないため、家計相談に来る人も少ない。

ところが、Dさん夫婦の場合は不幸中の幸いというべきか、夫が突然のねじれ腸に襲われたり、妻が慢性の肩凝りや腰痛に悩まされたりと、この一年でとかく病院が身近な存在になった。健康面で不安を抱えると、いやでも応でも老後の心配をせずにはいられない。「今から準備しておいたほうがいいことはないだろうか」。夫婦間でそんな会話が交わされるようになってきたため、相談に訪れたのだ。

夫の提案は、知人に教えてもらった「介護付き有料老人ホーム」への入居だ。公的な特別養護老人ホームは入居金が不要で月々の支払いも15万円以内で収まるケースが多い。だが1000人待ちはザラで、要介護3~5でなければならないなど、必ずしも入居できるとは限らない。

一方、教わった介護付き有料老人ホームであれば、自立した生活を送っている人でも入居できる。併設のテニスコートやスイミングプールで、夫婦揃って汗を流すことができるという話にも心惹かれた。ただ、2人部屋入居金として1500万円、月額40万円、医療費や趣味費用などで月5万~10万円程度は必要とのことだった。