好調なホテル事業はロンドン進出へ

――西武ホールディングスの売上高をみると、2013年3月期にホテル・レジャー事業の売上高が、鉄道など都市交通・沿線事業の売上高を上回りました。それ以降、売上高の伸びもホテル・レジャー事業が上回っています。攻めの経営は沿線開発だけではありませんね。

日本は訪日外国人観光客(インバウンド)の観光客が急激に増えていますが、プリンスホテルはその大きな享受者です。赤坂プリンスホテル跡地に2016年にオープンした「東京ガーデンテラス紀尾井町」の中にある「ザ・プリンスギャラリー 東京紀尾井町」のお客さまの7割以上は外国の方で、そのうち4割近くが欧米からのお客さまです。

都内のそのほかのプリンスホテルのお客さまのうち約6割が日本人なのに対し、紀尾井町のホテルはインバウンドのフォローの風が吹いています。

――海外でのホテル事業も積極的ですね。2017年に高級ホテルチェーンのステイウェルを子会社し、さらに高級ホテルを展開する英国のAB Hotelsの全株式を取得されました。どのように活用されますか。

今年夏以降に、ロンドンに「The Prince AKATOKI」ブランドの第1号店を開業します。AKATOKIは暁の古い表現の「明時(あかとき)」から取りました。海外の高級ホテルに日本らしい名前を付けて、プリンスホテルの認知度を高めたいと考えています。

欧米の接客術と日本のおもてなしを融合

――日本のホテル業界はバブル経済が膨張した時期に海外のホテルチェーンを買収したものの、その後、必ずしも順調に経営はできませんでしたが、今回は大丈夫でしょうか。

撮影=安井孝之

海外事業での収益向上も狙っていますが、プリンスホテルにとってさまざまなメリットが享受できると思います。欧米のホテルチェーンの経営手法には学ぶべきものが多い。フラットな組織にして意思決定が早く、現場には素晴らしいマニュアルが整備されている。新入社員でも、お客さまに対してやるべきことがすぐに分かる仕組みになっている。こうした経営管理手法は、日本のホテル事業者にとっては学ぶべき有意義なものです。

一方、日本側も海外のホテルの中に和食メニューやすしカウンターを設置し、日本的なおもてなしを味付けし、事業に貢献できます。海外の高級ホテルチェーンのお客さまが日本のプリンスホテルを認知してくれれば、インバウンド客として来日した際にプリンスホテルを選んでくれます。