▼妻が自己啓発で浪費

「すごくいい話があるから、聞くだけ聞いてみない?」

「妻が百万単位の金を使い込んでいた」「妻が返しきれないほどの借金を抱えていた」……。こんな話は珍しくありません。私たちの事務所でも最近、こんな相談がありました。

その方は専業主婦でしたが、ママ友の1人に、「すごくいい投資の話があるから、聞くだけ聞いてみない?」と誘われたそうです。そのママ友の知り合いという男性に会って話を聞いてみると、「有望な未公開株があるから、お金を預けてもらえれば、何倍にもして返します」と言われます。

「自由になるお金はないから」と断ると、消費者金融から借りればいいと言われたそうです。「消費者金融の利率よりも、こっちの利回りのほうが大きい。マイナスなのは最初の数カ月だけで、あとはもう増えていくだけだから」と説得され、そこでうっかり借りてしまったのが最大のミステイクでした。

実はごく初期の段階で、消費者金融からお金を借りさせるのが彼らの常套手段。その額は少なくとも200万~300万円、多くて500万~600万円。被害者がお金に困って返済が滞るようになると消費者金融も貸してくれなくなるので、そうなる前にまとまった金額を借りさせるのです。

悪質な場合、「私は無職だから審査が通らない」と言う被害者に対して、「こういうふうに書類を書けば通るよ」と架空の職業をでっちあげて審査を通す方法を指南したりする。こうなると被害者自身も私文書偽造などの犯罪に加担したことになるので、あとで自分が騙されたことに気がついても警察に相談しにくくなってしまう。これも詐欺師がよく使う手口です。

相談に来たその主婦も夫に内緒で消費者金融からお金を借り、その男に預けました。さらに、「人が集まれば集まるほど儲けも大きくなるから、知り合いにもどんどん声をかけて」と乗せられ、5~6人のママ友を誘い入れてしまった。数カ月後にその男はお金を持って行方をくらまし、ママ友たちは全員芋づる式に自己破産に至ってしまったのです。