▼株、401kで含み大損
長期投資で早めに「利確」した人の末路
投資で大きな含み損を抱えてしまった場合、まず考えなくてはいけないのは「何をもって『損』と判断するか」です。
そもそも、投資をするときには投資の基本方針があります。その方針から大きくズレてしまうような含み損であれば、それはすぐに「損」と判断し、損切りを考える必要があるでしょう。一方、価格が下落したとはいえ、もともと長期的に保有する方針だったのなら、むしろ買い増す機会だと捉えることもできます。
では、その投資の基本方針はどのように考えればいいのか。私は基準は大きく2つあると考えています。1つは「期間」。5~10年など、長期にわたって保有してトータルで利益を上げるのか、数カ月などの短期売買で利益を上げるのか。もう1つは個別の会社にかけるのか、相場全体にかけるのか。つまり、個別の会社の「成長力」を評価して投資するのか、日経平均などの大きな「相場」を見て投資するのかということです。
たとえばトヨタ自動車などの大企業の株であれば、安定はしていますが、株価がこれから極端に上がる見込みは薄いでしょう。また経済全体の動きと連動する側面が大きいので、どちらかというと相場にかけている投資です。しかし成長分野のベンチャー企業などであれば、うまくいけば株価が短期間で数倍になるかもしれません。
いま含み損を抱えた自分の投資は、もともとはどのような方針ではじめたものだったのか。そこに立ち戻れば、「損」と判断して損切りすべきなのかそうでないのか、見極めることができるはずです。
多くのビジネスパーソンの方が加入している確定拠出年金(401k)は60歳まで考えたうえでの長期の投資となります。短期的に見れば下がることもありますが、長期的な観点で過去の推移を見れば年平均で6%くらいの利回りを上げている。つまり投資の基本方針に照らし合わせれば、一時的に下げたとしても安易に売ってはいけないということです。
投資では損切りも大切ですが、価格が上がっているときの「売り時」はもっと重要です。儲かっているときにいつ売るかというのは、人間性が表れます。長期保有するつもりだったけれど、途中で予想以上に上がったから1度利益を確定させたほうがいいかも、と考える人は少なくありません。しかし、よくあるのが売った後にさらに上がり、再度買い直すというパターン。でもそこからさらに上がることはなく、むしろ下げてしまって利益分を失ってしまう、そんな人をたくさん見てきました。
やはりここでも、値の上げ下げにかかわらず、基本方針が長期なのであれば継続保有する。最初に立てた基本戦略に従うべきなのです。
打つべき一手:当初の投資計画を鑑み、損切りか追加投資かを判断せよ
経済評論家
1969年宮城県生まれ。東北大学卒業後、日経BP記者、野村証券グループの投資ファンド運用会社を経て独立。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。