騙されたことにはなかなか気づかない

なぜ彼女たちが騙されたことにすぐ気づかないかというと、お金を預けた直後はちゃんと配当が返ってくるからです。たとえば100万円の投資に対して月10万円の利子が返ってくる。こういう状態が半年ぐらい続く。儲かっているうれしさで、相手をすっかり信用しきっているので、騙されたことにはなかなか気づかないのです。

しかし配当は徐々に途切れがちになる。そこで問い合わせると、「いま、ちょっと事情があって現金に換えられない状況なんだよね」などと説明されて、その場は納得。しかしやがて完全に配当が途絶え、気づいたら相手と連絡が取れない状況になっている。そこでようやく騙されたと認めざるをえなくなり、夫に窮状を打ち明けたり、弁護士を訪れることが多いようです。

これは「ポンジ・スキーム」と呼ばれる典型的な投資詐欺の一種で、過去に何度も似たような事件が起きているのですが、騙される人が後を絶ちません。最近はその入り口が「自分の価値を高めましょう」というように、自己啓発セミナーの形をとって人々を誘い込んでおいて、実際に参加すると、いつの間にか投資や情報商材の話に誘導されてしまうケースもあります。

このように主婦が騙されて大金を失うケースには、私の経験上では、2通りのパターンがあります。1つは冒頭で挙げたママ友の例のように、主婦が儲け話に目が眩んでしまうケース。

彼女たちの多くの世帯年収は500万~600万円ぐらいで、生活に困窮しているというわけではないけれども、子どもの将来などを考えるともっと余裕がほしい。そこで妻は「自分がうまく稼げば、余裕のある暮らしができる」と考えて手を出してしまう。

もう1つは、妻が悩みを抱えていたり、現在の自分の状況に不満を感じていたりするケースです。かといってべつにドラマ「昼顔」のような不倫をしたいわけでもない。そこで心の癒やしや精神的な救いを求めて、新興宗教やスピリチュアル系の霊感商法などにすがってしまう。この場合、奥さんの心がその人に依存してしまっているケースが多く、お金は断てたとしても、解決には相当時間がかかります。

もっともこのケースは、「最近、妻がおかしい」ということが、目に見えてわかりやすい。なぜなら数珠、指輪、お札、仏像などの「グッズ」が家のなかに増えていくからです。モノ自体は百円ショップでも売っているようなものなのに「これは教祖様がパワーを込めたもので、身につけているとあなたを悪いことから守ってくれる」と言って、10万円くらいの値段で売りつけていたりします。