TOB後の判断を誤ると、組織の統率が取れなくなるおそれ

今回のTOB成立はわが国企業全体にとって大きな意味がある。大手企業が仕掛けた敵対的TOBの成立を受け、わが国企業の経営風土は、融和重視から、資本の論理に基づいたものに変化していくだろう。

今後、筆頭株主と経営陣の議論が行き詰まった場合、国内主要企業間での敵対的TOBが増える可能性がある。ただし、TOBの成立が企業の成長を保証するわけではない。TOB成立後の判断を誤ると、組織の統率が取れなくなるおそれがある。

そのリスクを抑えるために、企業は、組織をまとめ、持続性あるビジネスモデルを確立しなければならない。伊藤忠によるデサントへのTOB成立を契機に、組織力の引き上げを通して、長期の視点で成果の実現にこだわる企業が増えることを期待したい

真壁 昭夫(まかべ・あきお)
法政大学大学院 教授
1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授などを経て、2017年4月から現職。
(写真=時事通信フォト)
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