※本稿は、パトリック・ハーラン『「日本バイアス」を外せ!』(小学館)を再編集したものです。
なぜ日本は移民の受け入れに消極的なのか
少子高齢化が進む日本では、特に農業や介護の分野などで、今後ますます人材が不足することが予想されます。AIやロボットによって一部は補えるかもしれませんが、やはり生身の人間にやってほしいことって、いっぱいありますよね。マッサージチェアは昔からありますが、マッサージ屋さんはなくなりません。それと一緒。
僕は社会の多様化につながる、外国人労働者を受け入れることには基本的に前向きです。経済的にも、高度な技能を持つ外国人の受け入れは、日本の再成長のために必要だと思っています。あるいは、高度な技能を持つ日本人が自由に仕事できるように、単純労働でそれを支える外国人も必要ではないでしょうか。いろいろ含めて、僕は「移民」賛成派です。というか、僕も移民ですしね。
しかし日本で移民の話をすると「移民? あり得ない!」と即座に否定する方も少なくないようです。日本には鎖国時代もありましたし、開国後も移民に消極的な政策をとってきました。その上、最近は海外で移民・難民関係のトラブルが目立ちます。日本国民が不安を抱くのは当然かもしれません。でも、このままでは、2050年には労働人口が半減し、3人に1人が65歳以上になると予測されている日本だからこそ、移民の受け入れを呼びかける声も年々増えています。実際に移民を受け入れたら日本はどうなるのか。「あり得ない!」で話を終わらせるのではなく、今のうちにしっかり考えてみませんか。感情的にならず、あくまでも冷静に。
世界に混乱を招いたトランプ大統領の入国禁止令と国境の壁
移民といえば、トランプ大統領は就任直後の2017年9月、一部諸国の移民や難民のアメリカ入国を禁止する入国禁止令を発令しました。去年の秋には難民集団を「侵入者」と呼び、メキシコとの国境の整備強化を命じました。今年に入って、議会で予算の確保ができなかったため、非常事態宣言して国境の壁の建設を無理やりやると決めました。この流れを受け、国内外で多くの人々の怒りを買い、国際的な混乱を招いています。
これは「テロリストとつながりのある個人を見つけ出し、入国を阻止すること」が目的とされていますが、そもそも「移民や難民に、テロリストや犯罪者が紛れ込んでいる」というのは、本当でしょうか。
国連のグテーレス事務総長は、国際社会が向き合っているのは「とてもずる賢い国際的なテロ組織」であり、アメリカに入国する際は、「紛争が続いている疑われやすい国のものではなく、安心できそうな国のパスポートを利用するはず。もしくは、すでにアメリカにいる者を実行犯として使うだろう」と語り、トランプの主張を否定し、入国禁止令を批判しました。
大統領選挙期間中には、トランプ氏の長男、トランプ・ジュニア氏がツイッターで投稿した発言も多くの話題を呼びました。彼はカラフルなキャンディ「スキットルズ」が山盛りに入ったボウルの写真をアップしたうえで、シリア難民を「毒入り菓子」に例えた次のようなメッセージを添えたのです(多数の批判を受け、後に投稿は削除されました)。
「私がボウル1杯のスキットルズを持っていて、この中に食べたら死ぬものが3粒だけ交ざっていると言ったら、あなたは片手1杯分、召し上がるだろうか? これがわれわれのシリア難民問題だ」と。