ビジネスの世界では、もめごとは日常茶飯事。第三者的立場から、対立や衝突をうまく解決してくれ「調停人」を選ぶこともリスク回避の一環となる。
たとえばあなたが化粧品業界向けの製品開発を専門にしている小さな調剤会社、A社の研究開発担当副社長だと仮定してみよう。A社は先ごろ、業績のよい大手化粧品会社、R社に、自社の開発品を初めて提供した。R社は、大気汚染の肌への影響を防ぐクリーム「アーバン・ビューティ」を発売しようとしていたのである。ところが、初期生産のあとで製品がボトル内で大きな化学変化を起こし、販売できないような不快な臭いを帯びることに気づいた。
R社は、「アーバン・ビューティ」の開発とテストが適正に行われなかったせいだとして、問題の責任はあなたの会社にあると主張。それに対しあなたは、ボトル詰めする際、R社が十分な注意を払わなかったことに原因があると主張している。この対立は公にはなっていないが、R社は「アーバン・ビューティ」の販売許諾料25万ドルをA社に支払うのを拒否している。さらに、A社を訴えて、製造と宣伝キャンペーンの準備にかかった25万ドルを取り戻すといきまいている。
あなたとR社側の担当者は、この紛争が面倒でカネのかかる訴訟に発展する前に解決策をまとめようと努力してきた。A社にとって経済的影響は大きいし、紛争が公になると同社の信用が決定的に傷つくおそれがある。
あなたの同僚の1人が、紛争解決を助ける調停人を雇ってはどうかと提案する。調停人は裁判官や仲裁人とは違って紛争当事者が従わねばならない裁定を下す権限は持っておらず、むしろ紛争当事者と協力して、当事者が自主的な解決策を取り決める手助けをする。本稿では、紛争を解決するために適切な調停人──双方が納得できる人物──を見つけるプロセスをお教えしたい。