権利ではなく関心に注目する

紛争を解決するにはもっとよい方法がある。権利ではなく、関心──それぞれの立場の背後にある欲求や願望や懸念──に注目するプロの調停人を雇うことだ。

単純な例として、机を並べて働いている2人の社員が、後ろの窓を開けるか閉めるかで対立しているとしよう。一方は自分のほうが先輩なのだから自分に決定権があると主張し、もう一方は、照明については自分が譲歩したのだから窓の件では自分の思い通りにするのが当然だと主張している。マネジャーは両者に、窓を開けたい(閉めたい)理由を説明するよう求める。先輩社員は、窓から吹き込む風のために首筋がこわばると言う。もう一方の社員は、新鮮な空気がないと眠くなると言う。

マネジャーは隣の物置の窓を開け、2人の社員は吹き込む風を受けずに新鮮な空気を吸えるようになる。マネジャーは関心に注目する調停人の役を果たし、両者の立場の背後にある関心を探り出したのだ。紛争当事者の立場を一致させられない場合には、関心に注目することで双方が満足する結果を得られることが多い。

調停人としての私自身の経験から言うと、背後にある専門的問題について当初はまったく、あるいはほとんど知らない調停人が、きわめて複雑な紛争を解決できることは多い。優秀な関心注目型の調停人は、呑み込みが早く、問題を論じるのに必要な専門知識を短期間で学び取ることができる。さらに重要な点として、彼らは問題の専門的側面を完全には理解していなくても、その紛争がそれぞれの側にとってなぜ重要であり、どの解決策なら受け入れられる可能性があるかを把握することができる。その知識から出発して、最終的には解決案を出し合うことで、当事者がきわめて複雑な専門的問題を解決する手助けができるのだ。

●「適切な」調停人を選ぶ

調停人を選ぶ際には、調停人が出す提案を受け入れる必要はないことを念頭に置いておこう。したがって、調停のリスクはただ1つ、時間とカネをかけて結局、合意に至らないことだ。そのため、調停の価値を確信しているあるフォーチュン100社企業は、相手が本当に誠実な解決を望んでいると思われる場合は、評判の高い中立の調停機関から経験豊富な調停人のリストをもらって、その中から相手に調停人を選ばせることにしている。

調停初心者の場合は、評判のよい調停人派遣機関から調停人のリストを取り寄せるところから始めるとよいだろう。インターネットで検索したり、自社の法務部に問い合わせたりすれば、こうした機関を見つけることができる。リストをもらったら調停人に連絡をとって、彼らが調停した最新の事例3件の、双方のチーフ・ネゴシエーターの名前を尋ねていただきたい。